假りに所論のように昭和二三年五月一五日頃所轄警察署へ届出るつもりであつたのが檢舉のために不可能になつたのであるとしても處罰を免るべき權利を強制的に喪失せしめたのでないことは勿論であり被告人に對し刑罰を科することが前記覺書の趣旨に背反しないことも明白である、又前記覺書所定の要件を充して處罰せられないものが他にあるからといつてその要件を充さない被告人を處罰することが憲法第一四條に違反しないことは説明する迄もないところである。
檢舉のため警察署に届出ることが不可能になつた場合と右覺書適用の當否
銃砲等所持禁止令1條1項本文,憲法14條
判旨
銃砲等所持の登録申請期間を延長した連合国軍覚書の趣旨は、やむを得ない事情で期限内に申請できなかった者が正当な釈明を行った場合に限り処罰を免じさせるものであり、要件を満たさない者の処罰は法の下の平等に反しない。
問題の所在(論点)
銃砲等の不法所持について、登録申請期間を延長した覚書の要件を充たさない者を処罰することが、同要件を充たして処罰を免れる者との比較において、憲法14条の法の下の平等の原則に違反するか。
規範
特定の公的措置(本件では銃砲等登録の延長覚書)により処罰を免じられるためには、当該措置が定める要件(疎開等のやむを得ない事情の存在、及びそれに対する完全かつ簡明な釈明)を充たす必要がある。かかる要件を充たさない者を処罰することは、他に要件を充たして処罰されない者が存在するとしても、憲法14条の法の下の平等に違反しない。
重要事実
被告人は、昭和21年勅令第300号で定められた銃砲等の登録期限である同年10月15日以前から、非戦災都市である金沢市の住居において、特段の事情がないにもかかわらず拳銃等を所持し続けていた。昭和23年5月、被告人は当該拳銃等の不法所持により検挙されたが、本来の期間内に登録しなかったことについて、当局を納得させるに足りる正当な釈明を行うことができなかった。
事件番号: 昭和23(れ)685 / 裁判年月日: 昭和23年11月2日 / 結論: 棄却
刀劍所持許可願書の提出を、昭和二一年勅令第三〇〇號に規定された本來の提出期間中になさず、その延長期間中になした場合に、本來の期間中に登録しなかつたことにつき相當の理由あることの釋明書が添えられてない場合には、申請者に對し懲罰手段に出ることは違法でないから、之に對し原審が懲役刑を科したことは適法な上告理由とならない。
あてはめ
本件覚書は、美術品たる刀剣等につき、疎開等のやむを得ない事情により期限内に申請できなかった者が、真正かつ情状酌量すべき釈明を添えて申請した場合に懲罰を禁じたものである。被告人は非戦災都市に居住しており、期限内に申請できなかった「別段の事情」は認められない。また、検挙時に納得のいく釈明もなされていない。したがって、被告人は覚書による保護の対象外であり、他の適合者と異なる扱いを受けることは合理的差異の範囲内といえる。
結論
被告人を処罰することは、本件覚書の趣旨に背反せず、憲法14条にも違反しない。したがって、被告人の上告は棄却される。
実務上の射程
行政上の特例措置や宥恕規定の適用を受けられない者が、適用を受ける他者と比較して平等権違反を主張する場面での反論として活用できる。本判決は、特定の恩恵的措置を受けるためには客観的要件(やむを得ない事情)と主観的・手続的要件(正当な釈明)の双方が必要であることを示唆している。
事件番号: 昭和24(れ)2009 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことを以て、憲法第一三條に云う基本的人權を侵害するものでもなく(昭和二二年(れ)第二〇一號、同二三年三月二四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第九五〇號同年一〇月二一日第一小法廷判決)又犯情の類似した犯人間の處罰に差異があるからとて憲法第一四條の平等の原則に違反するということもできない(…
事件番号: 昭和26(れ)477 / 裁判年月日: 昭和26年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が単なる量刑不当の主張に帰する場合、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、その上告趣意の内容が実質的に原判決の量刑が不当であるという点に尽きていた事案である。 第2 問題の所在(論点):上告趣意が単なる量刑不当の…
事件番号: 昭和24(れ)444 / 裁判年月日: 昭和24年7月14日 / 結論: 棄却
しかし、刑の執行を猶豫すると否とは、事實審たる原裁判所が諸般の事情を斟酌して判定すべき自由裁量の事項に屬し、刑の執行を猶豫しない理由が人種、信條性、別社會的身分又は門地により被告人を差別するものでない限り憲法第一四條の規定の趣旨に反するものでないことは既に當裁判所大法廷の判例とするとでころある。(昭和二三年(れ)第七〇…
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。