一 銃砲等所持禁止令の適用を受ける銃砲が單に彈丸發射の構造を有するのみでは足らず、更に彈丸發射の機能をも備えなければならないことは、論旨の云う通りであつて、同令施行規則第一條第一號にも「銃砲とは彈丸發射の機能を有する装藥銃砲を云う」と明らかに規定されているが、單に「銃砲」と云えばその機能のある銃砲を意味することが常識なのであつて、原判決が「押収に係る拳銃一挺の存在」を證據に供したのは、その意味の銃砲であること疑のないところである。 二 裁判所が普通の刑を法律の定める範圍内で量定することが憲法第三六に當らないことについては、既に當裁判所にいくつかの判例が存し、(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日大法廷判決、昭和二三年(れ)第三四八號同年九月二三日大法廷判決、昭和二三年(れ)第三四八號同年九月二五日第二小法廷判決等)今さら多言を要しないところであつて、原判決が被告人に對し、懲役三月の實刑を言渡したことが憲法第三六條に反するという論旨は理由がない。
一 銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號の「銃砲」と單に「銃砲」という場合の證據力 二 實刑の言渡しと憲法第三六條
銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令施工規則1條1號,舊刑訴法第3601項,憲法36條
判旨
銃砲等所持禁止令における「銃砲」とは、単に弾丸発射の構造を有するのみならず、弾丸発射の機能をも備える装薬銃砲を指す。また、法律の定める範囲内での量刑や執行猶予の不付与は、裁判官の恣意によるものでない限り憲法36条に違反せず、適法な裁量の範囲内である。
問題の所在(論点)
1. 銃砲等所持禁止令の対象となる「銃砲」の意義およびその認定の適否。 2. 法律の範囲内での実刑判決および執行猶予の不付与が、憲法36条の禁じる「残虐な刑罰」に該当するか、あるいは裁判所の裁量権を逸脱するか。
規範
1. 銃砲等所持禁止令(及び同施行規則)にいう「銃砲」とは、単に弾丸発射の構造を有するのみでは足りず、現に弾丸発射の機能を有する装薬銃砲を指す。ただし、証拠上単に「銃砲」と表示されている場合は、特段の事情がない限り当該機能を有するものを意味すると解するのが相当である。 2. 憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」とは、不必要な苦痛を伴う酷烈な刑罰を指し、法律の定める範囲内でなされる通常の刑の量定や、執行猶予を付さない判断は、その裁量が恣意的なものでない限り、同条に違反しない。
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
重要事実
被告人は、終戦後から自宅二階の屋根裏に軍刀および拳銃1挺を隠匿所持していた。法規上の届出期間満了日である昭和21年10月15日以降も所持を継続していたため、銃砲等不法所持として起訴された。原審は、被告人の供述や押収された拳銃の存在に基づき、同日を始期とする所持の事実を認定し、懲役3月の実刑(執行猶予なし)を言い渡した。被告人は、拳銃の機能の有無が認定されていない点や、実刑判決が過酷で憲法36条に違反する点等を理由に上告した。
あてはめ
1. 銃砲の認定について:法令上、銃砲とは弾丸発射の機能を有するものを指すが、原判決が証拠として挙げた「拳銃1挺」は、社会通念上そのような機能を有するものを意味すると解される。したがって、機能の存在を明示的に説示せずとも、当該拳銃を「銃砲」と認定したことに合理性がある。 2. 量刑について:被告人の性格、社会的地位、犯行の経緯等の諸事情は記録上明らかであり、原審はこれらを総合的に勘考して執行猶予を付さない判断をしたものとうかがえる。この判断が裁判官の恣意(ほしいままなる思いつき)に基づいたと疑うべき形跡はなく、正当な裁量の範囲内である。
結論
1. 本件拳銃は銃砲等所持禁止令にいう「銃砲」に該当し、原判決の認定に違法はない。 2. 懲役3月の実刑判決は憲法36条に違反せず、執行猶予を付さなかったことも裁判所の適法な裁量権の範囲内であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
銃砲の定義に関する実務上の確認に加え、憲法36条と量刑裁量の関係を示す。特に、法定刑の範囲内での実刑判決が「残虐な刑罰」に当たらないこと、および執行猶予の付与が裁判所の広範な裁量に委ねられていることを論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(あ)1034 / 裁判年月日: 昭和27年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の範囲内で量定された実刑は、被告人にとって過重に感じられたとしても、憲法36条が禁じる「残虐な刑罰」には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bに対し、下級審において実刑判決が言い渡された。これに対し被告人側は、当該量刑が被告人にとって過重であり、憲法36条が禁止する「残虐な刑罰…
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…