一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというないのは勿論既に成立した犯罪を消滅又は變更せしむる理由もない。 二 昭和二四年三月一〇日附第八軍司令部APO三四三發、書簡「刀劍の所有權移轉に關する件」は武器所有者において止むを得ない事情があつて規定された期限内に所有、登録の許可申請をすることができなつた場合に、そのできなかつたことの完全且つ簡潔な釋明書を附して申請したときには、警察當局において、その釋明を眞正であり且つ情状酌量すべきものと思科するときは期限後と雖も申請者に對し銃砲等所持禁止令違反として檢舉その他懲罰手段に出てはならないという警察當局に對する指示に過ぎないものであつて、かかる許可申請をしたときは、既に成立した刑罰を廢止、變更又は兔除する法律効果を生ずるものとした裁判所に對する指令ではない。
一 銃砲等所持禁止令における所持許可の申請と犯意の有無 二 昭和二四年三月一〇日附第八軍司令部APO三四三發、書簡「刀劍の所有權移轉に關する件」の意義
銃砲等持禁止令1條,銃砲等持禁止令1條附則2項,銃砲等所持禁止令1條,昭和24年3月10日附8軍司令部APO343發、書簡「刀劍の所有權移轉に關する件」
判旨
銃砲等所持禁止令違反の罪は、許可なく刀剣類を所持することで成立し、許可申請の意思や不可抗力的事由による申請の遅延は犯意を否定するものではない。また、行政当局への指示に基づく期限後の申請受理は、既に成立した犯罪を消滅させる法律上の効果を持たない。
問題の所在(論点)
刀剣類の所持禁止規定に違反した場合において、許可申請の意思があり、かつ申請が遅延したことにやむを得ない事情(不可抗力等)があるとき、故意(犯意)が阻却されるか。また、行政当局に対する検挙抑制の指示が裁判所による刑の免除等の根拠となり得るか。
規範
銃砲等所持禁止令(当時)に基づく犯罪は、所定の刀剣類を所持することによって成立する。同条但書の許可がない以上、許可申請の意思があったことや、不可抗力により申請ができなかったという事情は、故意(犯意)を阻却せず、既に成立した犯罪を消滅又は変更させる理由にもならない。また、警察当局に対する内部的な指示や運用上の配慮は、裁判所を拘束し刑罰を免除させる法律上の効果を有するものではない。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
重要事実
被告人は、刀剣類合計31振を所持していた。被告人は、不法に所持すれば罰せられると認識していたが、刀剣審査委員に手続きを相談したものの返事がなく、手続きが不明確であったため、許可を得ないまま所持を継続した。弁護人は、不可抗力により期限内に申請ができなかった場合に検挙を控えるよう定めた軍司令部からの書簡に基づき、犯罪の不成立又は刑の免除を主張した。
あてはめ
被告人は刀剣の所持に許可が必要であることを認識しながら、事実上これを所持していた。許可申請の意思があったとしても、現に許可がない状態で所持を継続している以上、構成要件的故意は認められる。また、軍司令部から警察当局に出された指示は、情状酌量により検挙を控えるべきとする行政上の運用指針に過ぎず、法規範として裁判所が既に成立した犯罪を無罪としたり刑を免除したりすることを強制するものではない。
結論
許可なく刀剣類を所持した以上、申請の意思や遅延の事情があっても犯罪は成立する。また、行政上の検挙抑制の指示は裁判上の罪の成否に影響しないため、上告を棄却し有罪とする。
実務上の射程
行政上の許可を必要とする禁止規定において、許可を得る意図があるだけでは故意は阻却されないことを示す。また、行政庁内部の通達や指示が、刑事裁判における犯罪成立を直接左右する法的拘束力を持たないことを確認する際の実務上の参照点となる。
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…
事件番号: 昭和24(れ)989 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令の適用を受ける銃砲が單に彈丸發射の構造を有するのみでは足らず、更に彈丸發射の機能をも備えなければならないことは、論旨の云う通りであつて、同令施行規則第一條第一號にも「銃砲とは彈丸發射の機能を有する装藥銃砲を云う」と明らかに規定されているが、單に「銃砲」と云えばその機能のある銃砲を意味することが常識な…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和25(れ)529 / 裁判年月日: 昭和25年7月28日 / 結論: 棄却
昭和二三年二月二四日附米國第八軍司令部より日本政府内務省保局長宛の「日本の刀劍並びに鉄砲の回收、類別及び處分」と題する覺書は一定の要件の下に、刀劍並に鉄砲の登録申請の受付及び處理を昭和二三年六月一日まで延長を許可したものであつて、一旦成立した銃砲等所持禁止令第一條違反の罪に消長を來すものではない。(昭和二三年(れ)第一…