判旨
銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令違反罪の成立に故意(犯意)が必要か。また、処分を命じたものの確認を怠り放置した場合に、所持の犯意が認められるか。
規範
特別刑法における所持罪の成立には、対象物の存在を認識し、それを自己の支配下に置く意思(犯意)が必要である。具体的には、対象物の存在を認識した上で、その占有を継続する意思が認められる場合には、故意が肯定される。
重要事実
被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、実際に処分されたかどうかの結果を何ら確認しなかった。その結果、依然として被告人方に刀剣が存し続ける状態が継続していた。
あてはめ
被告人は自宅内に刀剣があることを認識しており、その存在を把握していたといえる。二男に処分を命じた事実はあるものの、その結果を何ら確認していない以上、客観的に刀剣が自宅に留まり被告人の支配下にある状態を容認していたと評価できる。したがって、処分命令のみをもって直ちに所持の意思が否定されるものではなく、依然として刀剣が自宅に存在する状態を放置したことにつき、所持の犯意があったと認められる。
結論
被告人に本件刀剣所持の犯意を認めた原判決に誤りはなく、銃砲等所持禁止令違反罪が成立する。
実務上の射程
不法所持罪における故意の認定において、一度は排除の意思を示したとしても、その後の確認を怠り放置した場合には、未必的な認識を含め『犯意』が継続していると認定される可能性が高いことを示している。構成要件的故意の有無が争点となる事案でのあてはめの参考となる。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和26(あ)4381 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪の成立において、行為者が具体的にいかなる法令によってその行為が禁止されているかを知らなかったとしても、それ自体は故意の成立を阻却しない。 第1 事案の概要:被告人が、法令によって禁止されている行為を行った。弁護側は、被告人が当該行為を禁止する具体的な法令を知らなかったことを理由に、故意が阻却さ…
事件番号: 昭和26(れ)434 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成否において、法定の除外事由がないことを認識して日本刀を所持している以上、後日返還または届け出る目的があったとしても、同罪の成立を妨げない。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず日本刀を所持した。被告人側は、当該所持が後日返還または届け出る目的によ…
事件番号: 昭和25(れ)529 / 裁判年月日: 昭和25年7月28日 / 結論: 棄却
昭和二三年二月二四日附米國第八軍司令部より日本政府内務省保局長宛の「日本の刀劍並びに鉄砲の回收、類別及び處分」と題する覺書は一定の要件の下に、刀劍並に鉄砲の登録申請の受付及び處理を昭和二三年六月一日まで延長を許可したものであつて、一旦成立した銃砲等所持禁止令第一條違反の罪に消長を來すものではない。(昭和二三年(れ)第一…