判旨
銃砲等所持禁止令違反罪の成否において、法定の除外事由がないことを認識して日本刀を所持している以上、後日返還または届け出る目的があったとしても、同罪の成立を妨げない。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令違反罪における「所持」の成否につき、後日の返還や届出といった目的の有無が、犯罪の成立を左右するか。
規範
法定の除外事由がないことを認識しながら日本刀を所持した事実があれば、その所持の動機や目的(後日返還する意図や、当局へ届け出る意図など)にかかわらず、禁止された所持に該当し、犯罪が成立する。
重要事実
被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず日本刀を所持した。被告人側は、当該所持が後日返還または届け出る目的によるものであるから、銃砲等所持禁止令(当時)に違反しない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず、その事実を認識した上で日本刀を所持している。被告人が主張する「後日返還または届け出る目的」は、所持という事実およびその認識を左右するものではなく、違法な所持状態を否定する根拠にはならない。したがって、所持の事実が認められる以上、目的のいかんを問わず同令違反の罪責を免れないと解される。
結論
被告人に銃砲等所持禁止令違反罪が成立する。
実務上の射程
行政取締法規における「所持」の概念において、目的や動機が構成要件該当性を左右しないことを示した。現在の銃刀法違反事件においても、拾得物の届出遅滞などが問題となる場面で、所持の主観的意図にかかわらず基本的構成要件を満たし得るという論理の基礎として参照しうる。ただし、正当な理由による一時的保管などは別途検討の余地がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…
事件番号: 昭和26(れ)490 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】拳銃の売買事実を認定する際、供述が予備弾倉について明示的に言及していなくても、予備弾倉が拳銃の附属品として一体的に示され、被告人がそれを含めて認める供述をしたのであれば、証拠に基づかない事実認定の違法はない。 第1 事案の概要:被告人Aは被告人Bに対し、拳銃、実弾および予備弾倉を売却し、Bはこれを…
事件番号: 昭和26(あ)1630 / 裁判年月日: 昭和27年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の否認の供述であっても、その一部に自認する内容が含まれる場合には、これを証拠として犯罪事実を認定することができ、直ちに自白のみによる有罪判決の禁止(補強法則)に抵触するものではない。 第1 事案の概要:被告人が公判等において犯行を否認していたが、その供述内容の中に一部、犯罪事実に合致する自認…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…