判旨
拳銃の売買事実を認定する際、供述が予備弾倉について明示的に言及していなくても、予備弾倉が拳銃の附属品として一体的に示され、被告人がそれを含めて認める供述をしたのであれば、証拠に基づかない事実認定の違法はない。
問題の所在(論点)
被告人の供述調書において特定の附属品(予備弾倉)についての明示的な言及がない場合に、当該附属品を含めた物件全体の売買事実を認定することが、証拠によらない事実認定(虚無の証拠による事実認定)の違法に当たるか。
規範
特定の物件(予備弾倉等)の授受に関する直接的な言及が供述内にない場合であっても、当該物件が主たる目的物(拳銃等)の附属品として一体的に提示され、被告人がその全体を自己の関与した物件として認める供述を行っているときは、当該附属品を含めた事実認定を証拠に基づいて行うことができる。
重要事実
被告人Aは被告人Bに対し、拳銃、実弾および予備弾倉を売却し、Bはこれをさらに転売した。第一審公判において、裁判官が「拳銃、実弾、予備弾倉」を提示した際、Aは「(提示されたものが)Bに売ったものに相違ない」と答え、Bも「(提示されたものが)買い受けて転売した拳銃実包であった」と答えた。弁護人は、供述の中で「予備弾倉」という単語が明示されていないため、予備弾倉の売買を認めた原判決には証拠がないと主張して上告した。
あてはめ
本件において、予備弾倉は拳銃の附属品であることが明白である。第一審公判において、裁判官は被告人らに対し、拳銃および実弾とともに予備弾倉を現実に示して質問している。これに対し被告人らは、示されたものが売買にかかる物件である旨を包括的に肯定する供述をしている。このような状況下での供述は、予備弾倉をも含めた趣旨であると解するのが合理的である。加えて、原判決は証拠として押収された予備弾倉の存在や押収調書の記載もあわせて掲げている。したがって、予備弾倉の存在およびその授受を認めた認定に証拠上の欠陥はないといえる。
結論
被告人らの供述は予備弾倉を含めた趣旨と認められ、他の証拠(押収調書等)とあわせても、証拠に基づかない事実認定の違法は認められない。上告棄却。
事件番号: 昭和26(れ)854 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、適法な証拠調べを経た押収品等の物証が存在する場合には、憲法38条3項の「自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合」には当たらず、有罪判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:被告人が脇差や日本刀等の所持により起訴された事案において、原審の公判調書には「押収品は全部これを…
実務上の射程
物件の特定や授受の事実認定において、主たる物と附属品が一体として扱われている実態がある場合、供述の解釈として附属品への言及を含めることが許容されることを示している。実務上は、証拠物の提示(示唆)とそれに対する被告人の反応がセットで記録されていることが、認定の合理性を担保する鍵となる。
事件番号: 昭和26(れ)434 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成否において、法定の除外事由がないことを認識して日本刀を所持している以上、後日返還または届け出る目的があったとしても、同罪の成立を妨げない。 第1 事案の概要:被告人は、法定の除外事由がないにもかかわらず日本刀を所持した。被告人側は、当該所持が後日返還または届け出る目的によ…
事件番号: 昭和24(れ)1759 / 裁判年月日: 昭和25年1月10日 / 結論: 棄却
論旨は、審理の冒頭における概括的な犯罪事実の承認によつて、犯罪事實の内容に亘り全部を認めたものとすることはできないと主張するなるほど、被告人が概括的の問答では犯罪事實を認めても、個々の點についてはこれに反する供述をしたような場合には、冒頭の答えだけで細部に亘る悉くの事實を認めたものとは云い難いこともあらう。しかしその何…
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。
事件番号: 昭和25(れ)1800 / 裁判年月日: 昭和26年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判廷において犯罪事実を全面的に認めている場合、証拠品の一部について取調べを行わなかったとしても、直ちに証拠裁判主義等の法則に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人が拳銃1丁および実包10個を所持していたとして起訴された事案。原審は、証拠品のうち実包5個については証拠調を行ったが…