銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所有者がその保管を他人に託したとしても、その受託者を通じて間接にその物の保存につき支配關係と持續する限り、なお該物件を所持するものといわざるを得ないのである。そしこの場合、その受託者が意思能力を有し責任能力を有するか否かは、もとより前示結論を左右するに足るものではない。
銃砲所持禁止令にいわゆる所持の意義と銃砲等の保管を他人に託した者の不法所持の責任
銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令2條
判旨
銃砲等の所持とは、物件の保管につき支配関係を開始し、これを持続する行為をいう。所有者が受託者を通じて間接的に物件の保存につき支配関係を持続する限り、受託者の責任能力の有無にかかわらず、所有者に所持罪が成立する。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令(当時)における「所持」の意義、及び物件を他人に預けて間接的に支配を及ぼしている場合に「所持」に該当するか。
規範
「所持」とは、物件の保管につき支配関係を開始し、これを持続する行為をいう。所有者が物件の保管を他人に託した場合であっても、受託者を通じて間接的に物件の保存につき支配関係を持続している限り、なお当該物件を「所持」していると解するのが相当である。この際、受託者が意思能力や責任能力を有するか否かは、所持の成否を左右しない。
重要事実
被告人は、銃砲等所持禁止令の施行前である昭和20年4月頃から、自己の所有する拳銃、指揮刀、軍刀をA方に預けていた。被告人は同令施行後も、正規の手続を怠ったままこれらをA方に預け続け、その保存につき支配関係を持続させていた。その後、被告人は一部の拳銃を自宅に持ち帰り、昭和22年10月頃まで保管していた。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
あてはめ
被告人は本件物件をAに預けていたが、その保管を託した状態においても、受託者であるAを通じて間接的に物件の保存につき支配関係を持続していたといえる。したがって、被告人が自ら物理的に保持していない期間であっても、物件に対する支配関係が断絶していない以上、被告人において「所持」していたものと評価される。受託者Aの責任能力等は、被告人と物件との間の支配関係の存否に影響を及ぼすものではない。
結論
被告人は銃砲等所持禁止令施行後も本件物件を「所持」していたものと認められ、同令違反の罪が成立する。
実務上の射程
物理的な保持を伴わない「間接所持」を肯定した判例であり、現在の銃刀法や薬物取締法における「所持」の解釈においても、支配の継続性を判断する際の基礎となる射程を有している。答案上は、物の管理・処分の可能性を基礎とする支配関係の有無を検討する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)2032 / 裁判年月日: 昭和24年6月11日 / 結論: 棄却
一 廢銃即ち屑物となつたものでない限りは、使用停止その他故障の爲め一時拳銃としての機能に障害のあるものであつても、通常の用法に依る手入又は修理を施せば能機を回復するものは、銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號に所謂「銃砲とは、弾丸發射の機能を有する装藥銃砲をいう」ものに該當することは、多言を要しないところであろう。蓋し…
事件番号: 昭和23(れ)525 / 裁判年月日: 昭和23年9月21日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和25(あ)2892 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
照準が破棄されていても拳銃の発射機能がないとはいえないし、また、弾丸が伴わなくとも鉄砲所持禁止令違反たるを免れないこと多言を要しない。