一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示する必要はない。 四 刑訴法第三二九條の「公判廷」とは、同條第二項所定の者が全部列席して開かれた審判廷をいうのであるから、たとえ判事の事務室で開かれたとしても、右第二項所定の人員が總て列席して開かれた以上公判廷である 五 刑訴法第七二條所定の字數記入がなくても、文字の挿入は必ずしも無効ではない。書類作成者が正當に挿入したものと認められる場合は有効である。 六 公判調書に特に公開しなかつた旨の記載がない限り公判廷を公開したものと解すべきである。 七 公判調書には事實上裁判長をした者が署名すればよいのであつて、裁判長としての表示を缺くも差支えない。 八 公判廷における自白は憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」に含まれない。 九 地方官庁の行政的措置として、法定の期間経過後銃砲等の所持を届け出た者を処罰しない旨の掲示があつた事実は、刑訴第四一五条所定の事実に準ずべきものではない。 一〇 勾留状を執行した司法警察官吏が勾留状に記載すべき「執行の場所」というのは、司法警察官吏が被告人にその勾留状を示してそれを執行した場所をいうのである。 一一 保釈後四ケ月以上を経過した後、公判廷においてなされた自白は、憲法第三八条第二項にいう、「不当に長い拘禁後の自白」ということはできない。 一二 銃砲等所持禁止令第一条は、わが国民一般に対し、許可なくして銃砲等を所持することを絶対に禁ずる趣旨である。 一三 犯意所持の認識がありながら、所持していれば、所持について犯意があつたといえるのであつて、その上さらに使用する意思等を必要とするものではない。
一 「九四式拳銃」と銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍 二 彈倉と銃砲等所持禁止令施行規則第一條銃砲の範圍 三 銃砲等所持禁止令第二の「所持した者」の判示方法 四 刑訴法第三二九條の「公判廷」の意義 五 公文書に文字の挿入あるも、その字數の記入なき場合 六 公判調書に公判廷を公開しなかつた旨の記載がない場合と公判の公開 七 公判調書に署名すべき裁判長の表示を缺く場合 八 公判廷における自白と憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」 九 銃砲等の所持を処罰しない旨の一地方行政官庁の掲示と刑訴第四一五条 一〇 勾留状に記載すべき「執行の場所」 一一 保釈後四ケ月後の公判廷における自白と憲法第三八条第二項 一二 銃砲等所持禁止令第一条の法意 一三 銃砲等所持禁止令第二條の所持に對する犯意
銃砲等所持禁止令1條1項本文,銃砲等所持禁止令2條,銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令施行規則(昭和21年内務省令28號)1條,刑訴法329條1項,刑訴法72條,刑訴法60條2項4號,刑訴法64條,刑訴法410條7號,刑訴法63條1項,刑訴法415条,刑訴法109条1項,刑訴法103条2項,憲法38條3項,憲法38条2項,刑訴應急措置法10條3項
判旨
「所持」とは、対象物を事実上支配し得る状態にあることをいい、その認識があれば足り、使用の意思までは不要である。また、自宅に置いてある物は、特段の事情がない限り、それだけで事実上の支配下にあると認められる。
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令等における「所持」の意義、およびその成立に必要な「犯意」の内容(使用の意思の要否)。
規範
「所持」の成立には、対象物を事実上支配し得る状態に置くこと(客観的要素)と、その所持の認識(主観的要素)があれば足りる。使用の意思、継続的所持の意思、あるいは譲渡・届出の意思などは、所持の犯意を否定するものではない。また、自己の住宅内に置かれた物は、特段の事情がない限り事実上支配し得る状態にあるものと解される。
重要事実
被告人は、九四式拳銃、弾倉および実包を自宅において所持していた。被告人は、銃砲等所持禁止令違反で起訴されたが、(1)自宅に置いていただけでは事実上の支配があるとはいえない、(2)弾倉を分離して処分する意思があった、(3)使用する意思はなく、他者に返還または官庁に届け出る意思があったため犯意がない、などと主張して上告した。
あてはめ
被告人が「自宅において所持していた」という事実からは、特段の事情がない限り、被告人が拳銃等を事実上支配し得る状態にあったといえる。また、弾倉は拳銃の必要的附属品であり、拳銃と共に管理されていた以上、所持の対象に含まれる。主観面については、被告人に所持の認識があったことは証拠上明らかであり、たとえ返還や届出の意思があったとしても、それは「引き続き長く所持する意思がなかった」という動機にすぎず、所持していた期間中の犯意(所持の認識)を否定する理由にはならない。
結論
被告人が許可なく自宅で拳銃等を認識して管理していた以上、所持の犯意に基づく不法所持罪が成立する。
実務上の射程
刑事法全般における「所持」の定義として汎用性が高い。特に「住宅内の物は特段の事情がない限り支配下にある」という推認規定に近い判断枠組みや、使用意思を不要とする「認識ある継続」の考え方は、現在の銃刀法や薬物5法(覚醒剤取締法等)の答案作成においても中核的な規範として利用できる。
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…
事件番号: 昭和24(れ)1977 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
一 論旨第一點は、検事は、被告人Aが拳銃一挺を所持した事實につき公訴を提起したのであるのに、原判決が彈倉およびサツクについて有罪を認定したのは、公訴のない事實について、裁判したものであると非難する。しかし彈倉とサツクとは拳銃の附屬品であるから、拳銃所持についての起訴は附屬品所持を含み、原判決がその全部の所持につき斷罪し…
事件番号: 昭和24(れ)1137 / 裁判年月日: 昭和24年9月29日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令第一條違反の犯罪は、所定の刀劍類を所持するを以て成立し、ただその所持當時同條但書の事由あるときはその犯罪の成立を阻却するに過ぎないものである。されば刀劍の所持當時同條但書所定の許可がない以上、たとい許可申請の意思がありしかも不可抗力的事情で許可申請をすることができなかつたといつて、犯意なしというない…
事件番号: 昭和23(れ)525 / 裁判年月日: 昭和23年9月21日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が…