一 論旨第一點は、検事は、被告人Aが拳銃一挺を所持した事實につき公訴を提起したのであるのに、原判決が彈倉およびサツクについて有罪を認定したのは、公訴のない事實について、裁判したものであると非難する。しかし彈倉とサツクとは拳銃の附屬品であるから、拳銃所持についての起訴は附屬品所持を含み、原判決がその全部の所持につき斷罪したのは起訴されない事實について判決したのではなく、論旨は理由がない。 二 論旨第二點は、彈倉およびサツクは銃砲等所持禁止令の對象にならないものであるからその沒収は違法だというのである。これらが拳銃の附屬品としてその所持を犯罪と認定され現物を押収された以上、それが拳銃とゝもに沒収されるのはむしろ當然であつて、論旨は理由がない。
一 拳銃の所持(起訴事實)及び附屬品である彈倉・サツクの所持を併せて斷罪の證據にした判決の正否 二 拳銃の附屬品である彈倉及びサツクを沒収することの可否
銃砲等所持禁止令1條,刑法19條1項2號
判旨
銃砲等所持禁止令(現・銃刀法)にいう「所持」とは、人が物を事実上その支配し得べき状態に置くことをいい、運搬のためのわずか2時間の占有であってもこれに該当する。また、拳銃の附属品(弾倉やサック)の所持は、主物である拳銃の所持に含まれると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. わずか2時間の運搬行為が、銃砲等所持禁止令における「所持」に該当するか。 2. 拳銃の附属品(弾倉・サック)の所持について、拳銃本体の公訴事実に基づき有罪を認定できるか。
規範
禁止法規にいう「所持」とは、事実上その物を支配し得べき状態にあれば足りる。また、犯罪の成立には法定の除外事由なく所持すれば足り、その動機(処分周旋の目的等)は構成要件ではない。さらに、主たる物(拳銃)の所持についての公訴および証明の効力は、その従たる附属品(補助弾倉、革製サック等)にも及ぶ。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
被告人Aは拳銃1挺、補助弾倉1個、革製サック1個を所持していた。被告人Bは、Aからこれら拳銃等の処分周旋を依頼され、受領してから第三者に引き渡すまでの約2時間、これらを運搬し占有した。弁護人は、Bによる短時間の運搬は「所持」に当たらないこと、および起訴状に記載のない附属品の認定は違法であること等を主張して上告した。
あてはめ
1. 「所持」の成否について:Bは拳銃等を自ら受取り運搬していることから、その間、当該物件を事実上支配し得る状態にあったといえる。したがって、たとえ2時間という短期間の運搬目的であっても、実力的支配が認められる以上、所持に該当する。 2. 附属品の取扱いについて:補助弾倉や革製サックは拳銃の附属品であり、社会通念上「拳銃」という言葉に包含される。したがって、拳銃の所持を内容とする公訴および証拠は附属品にも及び、これらを含めて有罪と認定しても公訴事実を逸脱するものではない。
結論
被告人Bの運搬行為は「所持」に該当し、附属品を含めた有罪認定および没収は適法である。上告棄却。
実務上の射程
「所持」の定義(事実上の支配)を示す基本的判例。所持の動機や時間の長短は犯罪の成否に影響しない。答案上は、銃刀法や薬物5法における「所持」の定義を論じる際の論拠として使用できる。また、主物と附属品の不可分な関係についての解釈指針としても有用である。
事件番号: 昭和24(れ)2032 / 裁判年月日: 昭和24年6月11日 / 結論: 棄却
一 廢銃即ち屑物となつたものでない限りは、使用停止その他故障の爲め一時拳銃としての機能に障害のあるものであつても、通常の用法に依る手入又は修理を施せば能機を回復するものは、銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號に所謂「銃砲とは、弾丸發射の機能を有する装藥銃砲をいう」ものに該當することは、多言を要しないところであろう。蓋し…
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和24(れ)1973 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
公判請求書の公訴事実に、被告人の自宅において隠匿所持したとあるのを、原判決摘示事實のように、自動車で運搬して所持したと認定しても、それは本件銃砲等不法所持の態様が異なつただけで基本たる事實に相違を來たしたのでないことは、右の公判請求書の公判事實と原判決摘示事實第一とを比照すればおのずから明らかである。よつて原判決には所…