公判請求書の公訴事実に、被告人の自宅において隠匿所持したとあるのを、原判決摘示事實のように、自動車で運搬して所持したと認定しても、それは本件銃砲等不法所持の態様が異なつただけで基本たる事實に相違を來たしたのでないことは、右の公判請求書の公判事實と原判決摘示事實第一とを比照すればおのずから明らかである。よつて原判決には所論のように、公訴の提起なき事實に對して有罪の認定をしたという違法はない。
公判事實に被告人の自宅に隠匿所持したとあるのを原審が自動車で運搬して所持したと判示したことの正否
舊刑訴法291條1項,舊刑訴法410條18號
判旨
公訴事実に記載のない事実であっても、起訴された一罪の一部にすぎない場合は、審判の請求がない事実を審判した違法はない。また、所持の場所や態様が公訴事実と異なっていても、基本的事実において相違がない限り、裁判所は有罪を認定できる。
問題の所在(論点)
公訴事実に記載されていない特定の凶器(拳銃)の追加や、所持の態様(隠匿から運搬)の変更が、裁判所の審判の範囲(公訴事実の同一性)を逸脱するか。
規範
検察官が一個の犯罪(一罪)として起訴した場合、判決で認定された事実が公訴事実の一部に含まれるものであれば、それは一罪中の一部の増加または変更にすぎず、審判の請求がない事実について審判したことにはならない。また、所持の態様や場所の変更についても、それが犯罪の基本的事実における相違を来すものでない限り、適法に認定し得る。
重要事実
被告人Bは、自宅において日本刀十数振を不法に隠匿所持したとして、銃砲等所持禁止令違反の罪で起訴された。しかし、原判決は、BがD方から自宅まで日本刀十一振に加え「拳銃三挺」をも自動車で運搬して所持した事実を認定した。B側は、公訴事実にない「拳銃の所持」や「運搬による所持」を認定したことは、審判の請求がない事実について有罪を認定した違法(不告不理の原則違反)があると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
あてはめ
検察官は本件を銃砲等所持禁止令違反の「一罪」として起訴している。公訴事実にない拳銃三挺の所持が認定されたとしても、それは同一の処罰規定に触れる一罪の中での数量的一部の増加にすぎず、別個の事実を裁いたことにはならない。また、自宅での隠匿所持が、自動車での運搬を伴う所持として認定された点についても、銃砲等不法所持という犯罪の性質に鑑みれば、単なる態様の差異にすぎない。これらは公訴事実の基本的部分において相違を来すものではなく、起訴の効力は及んでいるといえる。
結論
本件認定事実は公訴の提起があった範囲内といえ、不告不理の原則に反しない。したがって、原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所が認定できる事実の範囲(公訴事実の同一性)を判断する際、一罪の一部増加や、構成要件に直結しない態様の差異であれば、訴因変更手続を経ずとも認定可能であることを示す。現代の刑事訴訟法下では、争点明確化の観点から訴因変更の要否が別途議論されるが、審判の対象(裁判所の審理義務・権限の範囲)を画定する基準として重要である。
事件番号: 昭和23(れ)1984 / 裁判年月日: 昭和24年4月5日 / 結論: 棄却
拳銃と言えば社會通念上彈丸發射の機能を有する装藥銃砲であることがわかるのであるから、銃砲等所持禁止令に所謂銃砲に該當するものであることを窺い知ることができるし、また原判決舉示の證據物によつて、同法の所謂銃砲に該當することを認め得るから所論の如き違法はない。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和23(れ)2033 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
原判決は被告人がブローニング拳銃一挺を所持していた事實を證據によつて認定している。既にブローニング拳銃というからには、反對の判斷を下すべき特別の理由がない限り、當然に發射機能を具えたものと推断せられる。それ故に原審がその發射機能の有無を特に明確にしなかつたからとて、論旨第一點に主張されているように審理不盡の違法を犯した…
事件番号: 昭和24(れ)1977 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
一 論旨第一點は、検事は、被告人Aが拳銃一挺を所持した事實につき公訴を提起したのであるのに、原判決が彈倉およびサツクについて有罪を認定したのは、公訴のない事實について、裁判したものであると非難する。しかし彈倉とサツクとは拳銃の附屬品であるから、拳銃所持についての起訴は附屬品所持を含み、原判決がその全部の所持につき斷罪し…