拳銃と言えば社會通念上彈丸發射の機能を有する装藥銃砲であることがわかるのであるから、銃砲等所持禁止令に所謂銃砲に該當するものであることを窺い知ることができるし、また原判決舉示の證據物によつて、同法の所謂銃砲に該當することを認め得るから所論の如き違法はない。
銃砲等所持禁止令第一條にいわゆる銃砲の意義
銃砲等所持禁止令1條
判旨
拳銃等の銃砲所持について、判決においてその構造様式等を詳細に判示しなくても、社会通念上弾丸発射機能を有する装薬銃砲であると認められる以上、銃砲等所持禁止令上の銃砲に該当すると判断することは違法ではない。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令違反の罪の成否において、判決書に対象物の構造・様式等を詳細に記載する必要があるか。また、所持の放棄を予定していたとしても、現に所持していた事実があれば同法が適用されるか。
規範
「拳銃」という概念は、社会通念上、弾丸発射の機能を有する装薬銃砲であることを包含する。したがって、対象物が「銃砲」に該当するか否かの判断において、その構造や様式等の詳細な判示を欠いたとしても、証拠により社会通念上の拳銃としての実態(弾丸発射機能)が認められる限り、法的な「銃砲」該当性を肯定できる。
重要事実
被告人は、昭和22年9月8日頃、拳銃を所持していたとして銃砲等所持禁止令違反で起訴された。被告人は同月9日に知人に保管を依頼し、同月11日に帰国したが、原審は証拠に基づき同月8日時点の所持事実を認定した。これに対し、被告人側は、判決において拳銃の構造様式等が詳細に判示されていない点や、所持を放棄しようとしていた時期の所持を罰する点について、違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1502 / 裁判年月日: 昭和24年11月10日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令違反罪は、銃砲等を所持するを以て直に成立するものであるから、本件拳銃の所持携帯が、假りに數時間に過ぎなかつたとしても、犯罪の成立を妨げる理由とはならない。
あてはめ
まず、拳銃はその用語自体から社会通念上、弾丸発射機能を有する装薬銃砲であることが自明であり、詳細な構造説明がなくとも同法上の「銃砲」に該当することは理解し得る。本件でも、挙示された証拠物によりその該当性が十分に認められる。次に、被告人が過去(昭和22年8月)から所持し続け、最終的に知人へ預けるなどして手放す直前であったとしても、判示の9月8日時点で現に所持していた事実がある以上、同法1条が適用されるのは当然である。
結論
被告人が昭和22年9月8日頃に拳銃を所持していた事実は揺るぎなく、構造の詳細な判示がなくとも銃砲等所持禁止令違反は成立する。したがって、有罪とした原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、銃砲刀剣類所持等取締法(現行法)の前身にあたる法令に関するものであるが、構成要件の認定において「社会通念」を基礎に簡略化した判示を許容する実務的な傾向を示す。また、所持罪の継続性において、特定の日時に現に所持していれば、その前後の経緯(処分の意図等)にかかわらず、当該時点での罪が成立することを確認した事例として位置付けられる。
事件番号: 昭和23(れ)2033 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
原判決は被告人がブローニング拳銃一挺を所持していた事實を證據によつて認定している。既にブローニング拳銃というからには、反對の判斷を下すべき特別の理由がない限り、當然に發射機能を具えたものと推断せられる。それ故に原審がその發射機能の有無を特に明確にしなかつたからとて、論旨第一點に主張されているように審理不盡の違法を犯した…
事件番号: 昭和24(れ)1973 / 裁判年月日: 昭和24年11月1日 / 結論: 棄却
公判請求書の公訴事実に、被告人の自宅において隠匿所持したとあるのを、原判決摘示事實のように、自動車で運搬して所持したと認定しても、それは本件銃砲等不法所持の態様が異なつただけで基本たる事實に相違を來たしたのでないことは、右の公判請求書の公判事實と原判決摘示事實第一とを比照すればおのずから明らかである。よつて原判決には所…
事件番号: 昭和23(れ)1195 / 裁判年月日: 昭和23年12月2日 / 結論: 棄却
論旨は、諸般の事情を縷々陳述して、原審の科刑情状に比して重きに過ぎる所以を説き、被告人に對しては罰金刑又は執行猶豫の言渡を爲すべきであると主張するのである。しかし、假りに所論のような事情があつたとしても、原審が判示犯行を認定して、被告人に對し懲役六月の實刑を言渡したことをもつて違法であると速斷することはできない。
事件番号: 昭和24(れ)989 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令の適用を受ける銃砲が單に彈丸發射の構造を有するのみでは足らず、更に彈丸發射の機能をも備えなければならないことは、論旨の云う通りであつて、同令施行規則第一條第一號にも「銃砲とは彈丸發射の機能を有する装藥銃砲を云う」と明らかに規定されているが、單に「銃砲」と云えばその機能のある銃砲を意味することが常識な…