一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が預つて自分で引出に入れて置いたものである以上自分で支配し得る状態にあつたといえるから「所持」というに差支へない。 二 論旨は憲法違反という語を使用して居るけれどもこれは前記法律にいう所持という語を誤解して被告人の行爲が右「所持」に該當しないと主張し、それを前提として罪とならない行爲を罰した原判決は違憲だというのである。其故被告人の行爲が罪となるべきものであるならば論旨と雖憲法違反とはいわない趣旨であることが明らかである。從つて原判決か論旨にいう憲法違反であるか否かは被告人の行爲が罪となるべきものであるか否かによつてきまることでありこれは前記法律の「所持」に被告人の行為が該當するか否かの問題であるから結局右法律にいう「所持」の解釋の問題であつて憲法上の問題ではない。こういうのは假令論旨中に憲法違反という語が使用されて居ても裁判所第一〇條第一號にいう「處分が憲法に適合するかしないかを判斷するとき」というに該當しないと思うが(蓋しここで判斷すべきことは前記(所持)の意義如何ということ丈けで其れ以外何も憲法上の問題はなからである)尚本件の場合は論旨にいう憲法違反なりや否やを決する根據たる右「所持」の意義に付ては既に大法廷で詳しく判示して居り(昭和二三年七月二九日言渡同二三年(れ)第三九七號)それにより被告人の行爲が「所持」に該當することは明らかであるから最高裁判所裁判事務處理規則第九條第四項によつても大法廷によらず當小法廷において裁判を爲し得べきものである。
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」の意義 二 實質上憲法違反の問題とならない事項についての憲法違反の主張と小法廷による審判
銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令2條,裁判所法10條1號,憲法31條
判旨
銃砲等所持禁止令(当時)における「所持」とは、物を自己の支配し得る状態に置くことをいい、他人から預かった物であっても、自己の支配下にある以上はこれに該当する。自宅の引き出しに保管する行為は、特段の事情がない限り自己の支配し得る状態にあるものと認められる。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令(現行の銃刀法等に相当)にいう「所持」の意義、および他人からの預かり物を実父と同居する自宅に保管する行為が「所持」に該当するか。
規範
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
「所持」とは、対象物を自己の支配し得る状態に置くことを指す。これには、自己の所有に属するか否かは問わず、他人から預託された物であっても、客観的に支配可能な状態にあれば足りる。また、自宅内に保管されている物は、反対の事情がない限り、自己の支配し得る状態にあると推認される。
重要事実
被告人は、他人から預かった銃砲等を、父と同居する自宅内の水屋(台所等の収納棚)の引き出しに入れて保管していた。被告人は、当該物件が自己の所有物ではなく他人から預かったものであること、また父の家であることを理由に、自らの「所持」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
まず、被告人は他人から預かった物を自ら「引き出しに入れて置いた」のであり、この時点で客観的に物件を支配・管理しているといえる。次に、当該家屋が父の家であっても、被告人が自ら管理する引き出しに保管している以上、被告人が支配し得る状態にあることは否定されない。したがって、所有権の帰属や居住形態の主従にかかわらず、被告人の占有管理状況に鑑みれば、実質的な支配が認められる。本件において支配を否定すべき「特別の事情」は見当たらない。
結論
被告人の行為は「所持」に該当する。したがって、有罪とした原判決に法令解釈の誤りはない。
実務上の射程
「所持」の概念を、所有権等の法的権限ではなく「自己の支配し得る状態(事実上の支配)」として広く捉える。同居親族がいる場合や他人の所有物である場合でも、保管場所の状況や管理の事実関係から支配性が認められれば所持を肯定する。現行の銃刀法や覚醒剤取締法等の「所持」の解釈においても、基本的な判断枠組みとして射程を有する。
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和24(れ)2721 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
被告人が一定の機関、法定の除外事由なくして右露劍一振を所持していた事實が認定される以上、その所有權が何人に屬していたとか、或はその民事上の保管責任者が何人であつたかというような事情は銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長を來たすものではない。そうして又被告人が同令施行の時である昭和二一年六月一五日當時成年に達してい…
事件番号: 昭和23(れ)227 / 裁判年月日: 昭和23年6月19日 / 結論: 棄却
同一の事實について相互に矛盾する數個の證據がある場合には事實審裁判所はその自由な心證に從つてそのうち何れが眞實に符合するかを判斷して取捨選擇することができるのであつて特定の證據を他の證據より優れた證明力あるものとして他に優先して證據に採用しなければならないことはない、したがつて原審が何れも適法なものである原判決舉示の各…
事件番号: 昭和26(れ)2322 / 裁判年月日: 昭和27年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令(現:銃刀法等)における「所持」の概念について、自己のためにする意思を要さず、自己の支配し得る状態に置けば足りると判示した。 第1 事案の概要:被告人Aらは、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第100号)に違反して銃砲等を所持したとして起訴された。弁護人は、被告人の自白が架空であるこ…