判旨
銃砲等所持禁止令(現:銃刀法等)における「所持」の概念について、自己のためにする意思を要さず、自己の支配し得る状態に置けば足りると判示した。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令(現在の銃刀法等における所持概念の解釈に共通する)にいう「所持」の成立に、自己のためにする意思(本権的ないしは所有の意思など)が必要か、あるいは客観的な支配状態で足りるか。
規範
「所持」とは、物に対する実力的な支配関係を意味し、必ずしも自己のためにする意思(所有の意思等)を必要としない。対象物を自己の支配し得べき状態に置くことで成立する。
重要事実
被告人Aらは、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第100号)に違反して銃砲等を所持したとして起訴された。弁護人は、被告人の自白が架空であることや、所持の意思が欠如していること等を理由に上告したが、原審は証拠に基づき所持の事実を認定していた。
あてはめ
被告人は銃砲等を「自己の支配し得べき状態」に置いていた。弁護側は主観的な意図の欠如を主張するが、所持の成立には自己のためにする意思は不要である。したがって、被告人が対象物を実力的に支配可能な状態に置いていた以上、法上の「所持」に該当すると判断される。
結論
被告人が銃砲等を自己の支配し得る状態に置いた以上、自己のためにする意思の有無にかかわらず「所持」に該当する。
実務上の射程
本判決は、銃刀法や薬物取締法における「所持」の概念を画定する際の基礎となる判例である。「所持」を「事実上の支配」と捉え、所有意思などの主観的要素を排除した点は、現在の実務でも確立された解釈として機能している。答案上は、単なる保管や運搬であっても、支配の事実があれば所持に該当することを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)2721 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
被告人が一定の機関、法定の除外事由なくして右露劍一振を所持していた事實が認定される以上、その所有權が何人に屬していたとか、或はその民事上の保管責任者が何人であつたかというような事情は銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長を來たすものではない。そうして又被告人が同令施行の時である昭和二一年六月一五日當時成年に達してい…
事件番号: 昭和23(れ)525 / 裁判年月日: 昭和23年9月21日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和26(れ)548 / 裁判年月日: 昭和26年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の依頼を受けて、一定期間自宅に拳銃を隠匿蔵置する行為は、銃砲刀剣類等所持取締令(当時)における「所持」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、知人Aからの依頼を受け、判示の一定期間、自己の自宅内に拳銃を隠匿蔵置していた。 第2 問題の所在(論点):他人の依頼により自宅に拳銃を隠匿蔵置する行為…