判旨
他人の依頼を受けて、一定期間自宅に拳銃を隠匿蔵置する行為は、銃砲刀剣類等所持取締令(当時)における「所持」に該当する。
問題の所在(論点)
他人の依頼により自宅に拳銃を隠匿蔵置する行為が、銃砲等所持取締規定にいう「所持」に該当するか。
規範
「所持」とは、物に対する実力的な支配(事実上の支配)を継続的に維持することを指し、自己のために所持する場合だけでなく、他人のために保管・隠匿する形態も含まれる。
重要事実
被告人は、知人Aからの依頼を受け、判示の一定期間、自己の自宅内に拳銃を隠匿蔵置していた。
あてはめ
被告人は、Aの依頼という動機があるものの、自らの意思に基づき自宅という排他的支配が及ぶ場所に拳銃を置き、これを隠匿蔵置していた。この状態は、被告人が拳銃を事実上支配していたといえるため、規範に照らし「所持」にあたると解される。
結論
被告人の行為は「所持」に該当し、有罪とした原判決に違法はない。
実務上の射程
他人から預かっただけの「預かり所持」であっても、事実上の支配が認められる限り、銃刀法等の所持罪が成立することを示す基礎的な判例である。
事件番号: 昭和23(れ)525 / 裁判年月日: 昭和23年9月21日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が…
事件番号: 昭和26(れ)2322 / 裁判年月日: 昭和27年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令(現:銃刀法等)における「所持」の概念について、自己のためにする意思を要さず、自己の支配し得る状態に置けば足りると判示した。 第1 事案の概要:被告人Aらは、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第100号)に違反して銃砲等を所持したとして起訴された。弁護人は、被告人の自白が架空であるこ…
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…