被告人が一定の機関、法定の除外事由なくして右露劍一振を所持していた事實が認定される以上、その所有權が何人に屬していたとか、或はその民事上の保管責任者が何人であつたかというような事情は銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長を來たすものではない。そうして又被告人が同令施行の時である昭和二一年六月一五日當時成年に達していなかつたとしても、當時同人は既に滿一四歳を超え刑事實任能力者であつたわけであるから、同日以降の被告人の本件所爲について原判決がその責任を認めたことは當然である。」
刀劍の所有權が犯人以外の者に屬する場合と不法所持罪の成立
銃砲等所持禁止令1條
判旨
銃砲等所持禁止令(現在の銃刀法等に相当)にいう「所持」とは、対象物を自己の支配し得べき状態に置くことを指す。民事上の所有権の帰属や保管責任者の有無、あるいは行為者の未成年性(刑事責任能力がある場合)は、所持罪の成否に影響しない。
問題の所在(論点)
銃砲等所持禁止令における「所持」の意義、および民事上の権利関係や行為者の未成年性が所持罪の成否に影響するか。
規範
「所持」とは、対象物を自己の支配し得べき状態に置くことをいう。当該物件を事実上支配している限り、民事上の権利関係(所有権の帰属や保管責任の所在)は罪の成立を左右しない。
重要事実
被告人は、亡父から譲り受けた露剣一振について、手放すのが惜しいという理由で自宅に置いていた。当時、被告人は未成年であったが、14歳を超えており刑事責任能力を有していた。弁護人は、所有権の帰属や民事上の保管責任、および被告人が未成年であったことを理由に無罪を主張した。
事件番号: 昭和23(れ)525 / 裁判年月日: 昭和23年9月21日 / 結論: 棄却
一 銃砲等所持禁止令にいわゆる「所持」とは自分の支配し得べき状態に置くことをいうのである。他人から預つた物で自己の所有に屬しないということは「所持」ということの妨とならない。論旨にいう樣に人から預つて自宅の水屋の引出に入れて置いたという行爲は其れ丈けで右「所持」に該當するのである。父と同居して居り父の家であつても自分が…
あてはめ
被告人は露剣を自宅に置いていたのであり、これを「自己の支配し得べき状態」に置いていたといえる。亡父からの譲受品であることや、民事上の所有権・保管責任が誰にあるかという事情は、事実上の支配という「所持」の概念に何ら消長を来さない。また、犯行時に未成年であっても、14歳を超え刑事責任能力がある以上、その責任を認めることができる。
結論
被告人の所為は「所持」に該当し、銃砲等所持禁止令違反罪が成立する。
実務上の射程
「所持」の定義として「自己の支配し得べき状態に置くこと」という規範は、現在の銃刀法や覚醒剤取締法等の所持罪においても共通して用いられる。民法上の占有権や所有権とは別個の刑事法的概念であることを示す際や、未成年者の責任能力が備わっている場合の処罰根拠を示す際に有用である。
事件番号: 昭和23(れ)1831 / 裁判年月日: 昭和24年5月26日 / 結論: 棄却
銃砲等所持禁止令制定の趣旨は、要するに占領軍をはじめその他一般人に對し危害を加えるに役立つべき同令所定の物件が隱匿保存せられることを根絶せんとするにあることは、多言を要しないところである。されば、同令に所謂所持とは、かかる物件に對しこれが保管につき支配關係を開始しこれを持續する所爲をいうのである。從つてそれらの物件の所…
事件番号: 昭和24(れ)2366 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
たとえ押收手續に所論の様な違法があつたとしても押收物件につき公判迄において適法の證據調が爲されてある以上(此のことは記録によつて明である)これによつて事實の認定をした原審の措置を違法とすることは出來ない、押收物は押收手續が違法であつても物其自体の性質、形状に變異を來す筈がないから其形状等に關する證據たる價値に變りはない…
事件番号: 昭和26(れ)2322 / 裁判年月日: 昭和27年4月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令(現:銃刀法等)における「所持」の概念について、自己のためにする意思を要さず、自己の支配し得る状態に置けば足りると判示した。 第1 事案の概要:被告人Aらは、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第100号)に違反して銃砲等を所持したとして起訴された。弁護人は、被告人の自白が架空であるこ…
事件番号: 昭和23(れ)397 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 棄却
一 「九四式拳銃」は銃砲等所持禁止令施行規則(昭和二一年内務省第二八號)第一條に規定する銃砲に該當する。 二 彈倉は銃砲等所持禁止令施行規則第一條の銃砲の範圍内に含まれる。 三 被告人が「自宅において所持して居た」と判示すれば、銃砲等所持禁止令第二條の「所持した者」の判示方法として缺くるところがなく、所持の態容を判示す…