たとえ押收手續に所論の様な違法があつたとしても押收物件につき公判迄において適法の證據調が爲されてある以上(此のことは記録によつて明である)これによつて事實の認定をした原審の措置を違法とすることは出來ない、押收物は押收手續が違法であつても物其自体の性質、形状に變異を來す筈がないから其形状等に關する證據たる價値に變りはない、其故裁判所の自由心證によつて、これを罪證に供すると否とは其專權に屬する。
違法な押收手續により押收された物件の證據能力
舊刑訴法150條,舊刑訴法337條,舊刑訴法338條
判旨
違法な手続によって押収された物であっても、物自体の性質や形状には変異が生じないため、証拠価値に変わりはなく、裁判所の自由心証によって証拠とすることが認められる。
問題の所在(論点)
捜査機関による物件の押収手続に違法がある場合、その押収物件の証拠能力(刑事訴訟上の証拠として用いることの可否)が否定されるか。
規範
押収物の証拠能力について、押収手続に違法があったとしても、物自体の性質・形状には変異を来すことがなく、その形状等に関する証拠としての価値に変わりはない。したがって、裁判所の自由心証によって、これを罪証に供するか否かは裁判所の専権に属する。供述を記載する訊問調書とは異なり、手続の違法が内容の真偽に影響を及ぼすおそれがないため、違法収集証拠であっても証拠能力は否定されない。
重要事実
被告人が刃渡り30センチメートルの匕首(あいくち)を所持していた事案において、司法警察職員による当該匕首の押収手続に違法があったと主張された。弁護人は、訊問調書作成手続が違法な場合に証拠能力が否定される理論を援用し、違法な押収手続によって得られた物件の証拠能力を否定すべきであると争った。
事件番号: 昭和24(れ)2721 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
被告人が一定の機関、法定の除外事由なくして右露劍一振を所持していた事實が認定される以上、その所有權が何人に屬していたとか、或はその民事上の保管責任者が何人であつたかというような事情は銃砲等所持禁止令違反罪の成立には何等の消長を來たすものではない。そうして又被告人が同令施行の時である昭和二一年六月一五日當時成年に達してい…
あてはめ
本件における匕首は、仮に押収手続に違法があったとしても、その形状(刃渡り)や性質といった事実自体に何ら変化を生じさせるものではない。供述証拠の場合、訊問手続の違法が供述内容の真偽に影響を及ぼすおそれがあるが、非供述証拠である押収物はその性質が異なる。本件では公判までに適法な証拠調べが行われており、その形状等に基づき事実認定を行うことに違法はない。
結論
押収手続に違法があっても、押収物件自体の証拠能力は否定されない。
実務上の射程
本判決は、いわゆる違法収集証拠排除法則が確立される前の古い判例(昭和24年)であり、非供述証拠について「物自体に変化はない」として証拠能力を広く認める「性質不変説」の立場を採っている。現在の実務・判例(最大判昭53.9.7等)では、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、将来の違法捜査抑制の観点から相当でない場合に証拠排除を認める枠組みに移行しているため、本判決の法理をそのまま適用する際は注意を要する。答案上は、排除法則の歴史的背景や、非供述証拠の特質を論じる際の比較対象として言及されるにとどまる。
事件番号: 昭和24(れ)1252 / 裁判年月日: 昭和24年7月5日 / 結論: 棄却
一 公判廷において證據調をした書類を公判調書に記載するには如何なる書類につき證據調がなされたかを明確にすれば足り、必ずしもその書類の一々に付き個別具體的に掲記する必要のないことは、しばしば當裁判所の判例(例へば昭和二二年(れ)第二七七號同二三年四月八日第一小法廷判決)に示されている通りである。 二 しかし憲法第三七條第…
事件番号: 昭和23(れ)1263 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
刑訴應急措置法第一二條第一項本文については、證人其他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類又は之に代るべき書類は公判期日において被告人に對し供述者又は作成者を訊問する權利のあることを告知して其訊問の請求をするかどうかを確かめることは望ましい事ではあるが之をしなかつたからとて前記法條に違反するものでないことは當裁判所の…
事件番号: 昭和23(れ)2014 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
しかし舊刑訴法第四一〇條第一三號に「法律の規定により公判廷において取調ぶべき證據の取調をなさざるとき」とあるのは同法第三四二條のように、特に法律の明文を以て公判廷において取調ぶべきことを規定してある場合に、その取調をしなかつたような場合を指すのであつて裁判所が必要と認めない證據書類において法廷の證據調をしない場合の如き…