一 公判廷において證據調をした書類を公判調書に記載するには如何なる書類につき證據調がなされたかを明確にすれば足り、必ずしもその書類の一々に付き個別具體的に掲記する必要のないことは、しばしば當裁判所の判例(例へば昭和二二年(れ)第二七七號同二三年四月八日第一小法廷判決)に示されている通りである。 二 しかし憲法第三七條第一項に「公平な裁判所の裁判」というのは構成その他において偏頗の惧れなき裁判所の裁判であること(昭和二二年(れ)第一七二號、同二三年五月五日大法廷判決)從つて共同被告人間の刑の比較問題の如きは右の條項に關わりなきこと(昭和二三年(れ)第三六八號、同年七月一〇日第二小法廷判決)は、當裁判所の判例とするところであつて今なおこれを改める必要を認めない。
一 證據調をした書類を公判調書に記載する程度 二 憲法第三七條第一項の「公平な裁判所の裁判」と共同被告人間の科刑の權衡
舊刑訴法60條2項,憲法37條1項
判旨
公判調書における証拠調べの記載は、対象となる書類が明確であれば足り、個別具体的な掲記は必ずしも必要ではない。また、公判廷における証拠の取捨選択や訊問の範囲は裁判所の自由心証および自由裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
1. 公判調書における証拠調べの記載の適法性と、その程度(書類の特定範囲)。 2. 供述証拠の取捨選択および被告人訊問の範囲に関する事実審裁判所の裁量の限界。 3. 憲法37条1項にいう「公平な裁判所の裁判」の意義と、共犯者間の量刑の不均衡の関係。
規範
1. 公判調書に証拠調べをした書類を記載する際、対象となる書類が何であるかを明確にすれば足り、個々の書類を逐一掲記する必要はない。 2. 複数の供述のうち、いずれを信ずべきかの判断は、事実審裁判官の自由心証に委ねられる。 3. 被告人訊問をどの範囲で、どの程度行うかは、事実審裁判所の自由裁量に属する。
重要事実
事件番号: 昭和24(れ)2151 / 裁判年月日: 昭和24年12月24日 / 結論: 棄却
論旨は、本件には、再審を請求することのできる場合に該る事由があるというのであるが、かかる事由は上告の適法な理由とすることのできないことは、刑訴應急措置法第一三條第二項の規定するところである。
被告人AおよびBの強盗共謀等の事案において、原審の公判調書に「本件記録及別件記録中の各書類(各聴取書、訊問調書等)の要旨を告げた」旨の記載があった。弁護人は、(1)「別件記録」の内容が不明確であり、適法な証拠調べが行われていない、(2)被告人の公判供述が採用されず、強盗共謀の事実が認定されたことは不当である、(3)裁判長の被告人訊問が不十分である、(4)共犯者間の刑の不均衡は憲法37条1項の「公平な裁判」に反する、等と主張して上告した。
あてはめ
1. 本件では「別件記録」という表現に不明確な点は残るが、判決が依拠した全ての証拠書類は本件記録中に存在しており、これらについて適法な証拠調べがなされたことが確認できるため、破棄理由となる違法はない。 2. 公判供述と従前の供述が異なる場合、そのいずれを採用するかは自由心証(刑事訴訟法318条参照)の問題であり、原審が公判供述を斥けて強盗共謀を認めたことに違法はない。 3. 被告人訊問の範囲も裁判所の裁量であり、公判に立ち会った弁護人が補充訊問の請求や異議申し立てを行わなかった事実に鑑みれば、審理不尽とはいえない。 4. 「公平な裁判所」とは構成等に偏頗の恐れがないことを指し、量刑は各被告人の個別事情により決せられるため、共犯者間の均衡のみをもって憲法違反とはならない。
結論
原判決に証拠調べの手続違法、審理不尽、または憲法違反の事由は認められないため、本件各上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、公判調書の記載が包括的であっても、対象となる証拠が記録上特定可能であれば適法とされる。また、事実認定(証拠の取捨選択)や訴訟指揮(訊問の範囲)に関する広範な自由裁量を認めており、これを覆すには具体的な裁量権の逸脱・濫用を指摘する必要がある。量刑の不均衡についても、直ちに憲法問題とはならないことが示されている。
事件番号: 昭和23(れ)1388 / 裁判年月日: 昭和24年3月5日 / 結論: 棄却
一 直接審理主義や口頭辯論主義の建前をとることは必ず被告人の公判廷における供述のみに措信しなければならぬという結論を生むものではない、被告人の公判廷に於ける後述と所論の如き公判外における供述とが異る場合にその何れを採用するかは事實審裁判所が審理の手續を適法に履踐する以上自由に取捨判斷することが出來ることは當裁判所の屡々…
事件番号: 昭和26(あ)476 / 裁判年月日: 昭和27年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由に当たらない主張や単なる訴訟法違反の主張は、刑訴法405条の上告理由には該当せず、特段の事情がない限り棄却される。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が、原判決に判例違反および訴訟法違反があるとして上告を申し立てた。しかし、その判例違反の主張は、原判決が実際には判断を下していない事項を前提と…
事件番号: 昭和26(れ)588 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階での自白が拷問によるものと疑われる場合であっても、それが証拠として引用されておらず、かつ他に拷問を裏付ける資料がない場合には、憲法38条違反の問題は生じない。また、原審で証人喚問の申請がなされていない以上、証人尋問の機会を奪ったとする違憲の主張は成立しない。 第1 事案の概要:被告人Aは警…