本件起訴状についてみるもまた原審公判における檢事の公訴事實の陳述内容からみても、本件において被告人等に對して銃砲等所持禁止令違反の事實について、審判が請求せられたものと解することはできない。従つて原判決がその事實指示において被告人「Aに於て拳銃短刀を携え」又は「拳銃を擬して脅迫し」などと記述したのは單に強盜の手段としての脅迫の態様をあらわしたに過ぎないのであつて特に前記禁止令違反の事實を認定した趣旨ではないのであるから、原判決が右の事實に對し、同令を適用しなかつたのは當然であつて所論のような違法ありとすることはできない。
單に強盜の手段としての脅迫の態様として「拳銃短刀を携え」又は「拳銃を擬し」と認定した場合と銃砲等所持禁止令の適用の要否
刑法246條,銃砲等禁止令1條,銃砲等禁止令2條
判旨
共犯者の所有物であっても、それが犯罪に供された物件であれば、被告人に対して附加刑として没収を科すことができる。また、判決の事実摘示において犯罪の手段として特定の事実が記述されていても、それが公訴事実の一部として審判請求されていない限り、別罪を認定しないことは適法である。
問題の所在(論点)
1.起訴状に記載されていない事実を犯罪の手段(態様)として認定した場合、裁判所はその事実につき別罪を適用する義務を負うか。2.共同被告人の所有に係る物件について、被告人に対し没収の刑を科すことができるか。
規範
没収(刑法19条)は、被告人本人の所有物に限らず、共同被告人の所有に属する物件であっても、当該犯罪に関連する物件であれば被告人に対してその没収を科すことができる。また、裁判所の審判対象は公訴事実の範囲に限られ、犯罪の態様として示された事実が直ちに別罪の成立を意味するものではない。
重要事実
被告人Aほか6名の共同被告人は、拳銃、日本刀、短刀を携え、これらを突きつけるなどして脅迫し、強盗を行ったとして起訴された。第一審は、Aに対し、強盗罪の成立を認めるとともに、附加刑として押収されたピストル等の没収を言い渡した。これに対しAは、①事実摘示において拳銃等の所持を認定しながら銃砲等所持禁止令違反を適用しなかった点、および②自己の所有物でない物件まで没収された点は不当であるとして上告した。
あてはめ
1.本件起訴状及び検察官の公訴事実の陳述内容に照らすと、銃砲等所持禁止令違反の事実は審判請求されていない。判決書において「拳銃を擬して」等の記述があるのは、強盗罪における「脅迫の態様」を表現したに過ぎず、独立した犯罪として認定した趣旨ではないため、同令を適用しないことは正当である。2.第一審判決が主文で示した没収の言渡しは、共同被告人全員に対する附加刑である。物件が被告人Aの所有か他の共犯者の所有かを問わず、押収物全部についてAに対しても没収刑を科すことは、旧刑事訴訟法の規定に照らし適法である。
結論
被告人Aに対し、自己の所有物でない物件を含む没収を科したこと、及び起訴されていない所持の事実に別罪を適用しなかったことはいずれも適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
共犯事件における没収の対象範囲について、被告人自身の所有に限定されないことを示した実務上重要な判断である。答案上は、刑法19条2項(現行法)の解釈において、共犯者の所有物が「犯人以外の者に属しないもの」に含まれることを根拠付ける際に活用できる。また、不告不理の原則(刑事訴訟法378条11号参照)に関連し、審判対象の画定における態様描写の意義を確認する際にも有用である。
事件番号: 昭和23(れ)1370 / 裁判年月日: 昭和24年1月11日 / 結論: 棄却
被告人が相被告人と共謀の上、強盜をした事實を認定している原判決において、二人共謀の事實と共犯者のどちらかが現實に脅迫の實行行爲をしたことが判分上明確である以上、共犯者のうちどちらかが現實に實行行爲をしたかを明示していなくても、被告人の「罪トナルヘキ事實」の判示として缺くるところはない。