しかし刑は共犯者の全員に對して各別に言渡すべきものである以上、附加刑である沒収についても、たとい供用物件が共犯者中の一人の所有に屬する場合でも、各別に言渡して差支えないのである。そしてこのことは共犯者の全員が同一審級における共同被告人であると否とを問はないのである。
犯罪供用物件が共犯者中の一人の所有である場合に共犯者全員に對し各別に沒収の言渡をなすことの可否
刑法19條1項2號,刑法60條,刑法9條
判旨
刑は共犯者の全員に対して各別に言い渡すべきものであるから、付加刑である没収についても、供用物件が共犯者の一人の所有に属する場合であっても、各被告人に対して個別に言い渡すことができる。
問題の所在(論点)
刑法19条に基づき犯罪の供用物件を没収する際、当該物件が他の共犯者の所有に属する場合であっても、当該被告人に対して没収を言い渡すことができるか(没収の個別告知の要否と可否)。
規範
刑罰(主刑及び付加刑)は各被告人に対して個別に言い渡されるべき個別処分の原則に従う。したがって、犯罪の供用物件が共犯者の一人の所有に属する場合であっても、他の共犯者に対して当該物件の没収を言い渡すことは妨げられない。この理は、共犯者が同一審級における共同被告人であるか否かを問わず適用される。
重要事実
被告人は、共犯者Aと共に強盗の共同正犯として起訴された。犯行に用いられた拳銃及び実砲はAの所有物であった。第一審判決では、物件の所有者であるAに対してのみ没収が言い渡され、被告人に対しては言い渡されていなかった。これに対し、被告人及び検察官の両名から控訴がなされたところ、原審(控訴審)は被告人に対しても主刑に加えて当該物件の没収を言い渡した。被告人側が、自分のものではない物件を没収するのは違法であるとして上告した事案である。
あてはめ
本件の拳銃及び実砲は、強盗行為の供用物件(刑法19条1項2号)にあたる。被告人はAとの共同正犯として本件強盗を遂行しており、物件がAの所有に属するとしても、犯罪行為に供された事実において被告人との関連性は否定されない。刑は被告人ごとに言い渡すべきものである以上、付加刑たる没収も各被告人の判決主文において個別に示されるべきである。したがって、一審で没収の言い渡しがなかった被告人に対し、検察官の控訴を受けて控訴審が新たに没収を言い渡すことは、刑罰の個別性の原則に合致し、適法であるといえる。
結論
共犯者の所有に属する物件であっても、共同正犯である被告人に対し、付加刑として没収を言い渡すことができる。
実務上の射程
共犯事件における没収の判決構成を示す射程の長い判例である。答案上は、没収が被告人ごとに個別になされるべき「刑」であることを論証する際に用いる。特に、一部の被告人にのみ没収が言い渡された場合の不服申立てや、所有者が異なる場合の主文の書き方の根拠となる。なお、被告人の所有に属さない物件の没収については、現行法下では別途、第三者の所有権保護(没収に関する手続等)に留意する必要がある。
事件番号: 昭和23(れ)44 / 裁判年月日: 昭和23年10月14日 / 結論: 破棄自判
一 元來右匕首については第一審判決は(相被告人)Aに對してのみこれを沒收したものであり、そしてその判決に對しては被告人並びにその辯護人からのみ控訴したものであるから原審においては刑訴第四〇三條の規定により右第一審判決の主刑を被告人のために輕く變更せざる限り更に附加刑として被告人に對し右匕首を沒收する言渡を爲すことができ…