一 元來右匕首については第一審判決は(相被告人)Aに對してのみこれを沒收したものであり、そしてその判決に對しては被告人並びにその辯護人からのみ控訴したものであるから原審においては刑訴第四〇三條の規定により右第一審判決の主刑を被告人のために輕く變更せざる限り更に附加刑として被告人に對し右匕首を沒收する言渡を爲すことができないものである。然るに原審は第一審と同一の主刑を言渡し、しかも沒收すべからざる匕首の言渡をしたのは右刑訴法第四〇三條の規定にも反するものである。 二 犯罪の要に供した匕首を、経験則上首肯するに足りる証拠によらないで犯人以外の者に属しないものとして沒収した判決は違法である。 三 被告人の所爲が從犯として所斷せらるべしとの所論は結局原判決の事實認定を非難するに過ぎない。
一 第二審で新たに沒收の言渡をした場合と刑の不利益變更 二 証拠によらないで犯人以外の者に属しない物として沒収をした判決 三 從犯の主張と事實誤認
刑法19條,刑法62條,刑訴法403條
判旨
被告人のみが控訴した事件において、第1審が被告人以外の共犯者に対してのみ言い渡した没収を、控訴審が同一の主刑を維持したまま被告人に対して言い渡すことは、不利益変更禁止の原則に反し許されない。
問題の所在(論点)
被告人のみが控訴した控訴審において、第1審で言い渡されていなかった没収を附加刑として被告人に付加することが、不利益変更禁止の原則に反するか。また、第三者の所有物を没収することの適法性が問題となる。
規範
被告人のみが控訴した事件において、第1審判決の主刑を被告人のために軽く変更しない限り、新たに附加刑として没収を言い渡すことは、旧刑事訴訟法403条(現行刑事訴訟法402条の不利益変更禁止の原則)に抵触し、許されない。また、没収の対象物は、刑法19条に基づき、犯人以外の者に属しないものであることを証拠に基づき確定しなければならない。
重要事実
被告人が強盗等の罪で起訴され、第1審は共犯者Aに対してのみ犯行に供した匕首(あいくち)の没収を言い渡した。被告人と弁護人のみが控訴したところ、原審(控訴審)は、第1審と同一の主刑を維持した上で、被告人に対しても当該匕首の没収を言い渡した。しかし、当該匕首の領置目録や関係者の供述によれば、その所有者は被告人や共犯者以外の第三者Bであることが明らかであった。
あてはめ
本件では被告人のみが控訴しており、原審は第1審の主刑を軽減していない。それにもかかわらず、第1審で被告人には科されていなかった没収を新たに付加することは、被告人に不利益な変更を加えたといえる。また、没収の対象となった匕首は、証拠上、被告人や共犯者に属しない第三者Bの所有物であることが明白である。したがって、刑法19条の要件(犯人以外の者に属しないこと)を満たさず、かつ不利益変更禁止の原則に反する判決をなした原審の判断は違法である。
結論
原判決を破棄する。被告人のみが控訴した本件において、第1審より重い刑(附加刑の追加)を科すことはできず、また所有権の認定にも誤りがあるため、自判により没収を認めない刑を言い渡す。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)において、主刑が変わらない場合であっても、附加刑である没収を新たに付加することは不利益な変更に該当することを示す射程を持つ。答案上は、没収の可否や不利益変更の限界が問われる場面で、実質的な不利益の有無を検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)823 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
しかし刑は共犯者の全員に對して各別に言渡すべきものである以上、附加刑である沒収についても、たとい供用物件が共犯者中の一人の所有に屬する場合でも、各別に言渡して差支えないのである。そしてこのことは共犯者の全員が同一審級における共同被告人であると否とを問はないのである。
事件番号: 昭和23(れ)745 / 裁判年月日: 昭和23年12月14日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示する該其連續した行爲の始期終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪であつて被害者又は賍額に異同があるときは被害者中ある者の氏名を表示する外他は員數を掲げ賍額の合計…