一 被害者が脅迫者を一人と認識したという供述は、被告人が他の一名と共に脅迫したという被告人の自白を補強する証拠とすることができるから、右両供述を証拠としても証拠にくいちがいがあるとはいえない。 二 しかし、被告人一人で脅迫したとしても、また共犯者と二人で脅迫したとしても本件における被告人の強盜共同正犯たる罪責に影響するものでなく、審理不盡の違法ありとは云えない。
一 証拠間に齟齬のない事例 二 強盜における脅迫行爲を爲した者と強盜の共同正犯の成立の範圍
旧刑訴法410条19号,刑法60條,刑法236條
判旨
強盗の実行行為を単独で行ったか共犯者と共に行ったかという細部の食い違いは、強盗共同正犯の罪責を認める上で本質的な不一致とはいえず、被害者の供述を自白の補強証拠とすることができる。
問題の所在(論点)
自白の内容と補強証拠の内容が、犯罪の態様(単独か共同か)という細部において一致しない場合に、当該証拠を自白の補強証拠として採用し、有罪判決の基礎とすることができるか。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑訴法319条2項)は、自白が真実であることを保障するに足りる程度のものであれば足り、犯罪事実の全部を証拠によって直接証明する必要はない。また、自白と補強証拠との間に細部の食い違いがあったとしても、それが実質的に犯罪事実の核心を裏付けている限り、補強証拠としての適格を失わない。
重要事実
被告人は、逃走中の共犯者と二人で被害者を脅迫して強盗を働いたと公判廷で自白した。これに対し、被害者の供述(司法警察官聴取書等)では「一人の賊に脅迫された」とされており、脅迫の実行人数について自白と供述との間に不一致が生じていた。弁護人は、この食い違いを理由に、被害者供述を自白の補強証拠として採用した原判決の違法を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人が強盗を犯したという基本的な犯罪事実に変わりはなく、単独で行ったか共犯者と二人で行ったかは、いずれにせよ強盗共同正犯としての罪責を免れないため、本質的な差異ではない。被害者が「脅迫者は一人であった」と認識した供述は、少なくとも被告人本人が脅迫に関与したという自白の核心部分を補強するものであり、自白の真実性を担保するに足りる。したがって、実行人数の認識に関する細微な食い違いは、証拠の補強価値を否定するものではない。
結論
被告人の自白と被害者の供述に一部食い違いがあっても、被告人が強盗に加担した事実を裏付ける補強証拠として採用することは適法であり、原判決に審理不尽の違法はない。
実務上の射程
自白の補強法則における「補強の程度」に関する初期の判断を示した判例。実務上は、自白と他の証拠が枝葉末節の部分で異なっていても、実質的に犯罪の発生(客観的事実)を裏付けていれば補強証拠として十分であると論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和22(れ)151 / 裁判年月日: 昭和23年2月27日 / 結論: 棄却
一 第一審における共同被告人が檢事に對して、被告人との共同犯行を認めている場合、その陳述は刑訴應急措置法第一〇條第三項にいう被告人本人の自白にあたらない。 二 原審において被告人は心神耗弱者でないことを判断するに當つては刑事訴訟法第三六〇條第二項により其判断を示せば足りるのであつて、これに對する證據説明をする必要はない…