刑訴應急措置法第一二條第一項本文については、證人其他の者(被告人を除く)の供述を録取した書類又は之に代るべき書類は公判期日において被告人に對し供述者又は作成者を訊問する權利のあることを告知して其訊問の請求をするかどうかを確かめることは望ましい事ではあるが之をしなかつたからとて前記法條に違反するものでないことは當裁判所の屡々判例とするところである。
刑訴應急措置法第一二條第一項の被告人の訊問請求權と裁判所の告知義務
刑訴應急措置法12條1項
判旨
刑事訴訟法の応急的措置に関する法律12条1項の証拠調べにおいて、被告人に対し供述者を尋問する権利がある旨の告知や尋問の請求をするかどうかの確認を怠ったとしても、直ちに同条に違反するものではない。また、凶器を携行し背後に多数の共犯者を控えた状況は、被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫として認定し得る。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法の応急的措置に関する法律12条1項本文の適用に関し、裁判所が被告人に対して供述者等の尋問権の告知および尋問請求の確認を行わずに証拠採用した手続が、憲法が保障する防御権や適正手続に照らして違法となるか。
規範
公判期日において被告人以外の者の供述録取書等を証拠とする際、被告人に対し、供述者等を尋問する権利があることを告知し、かつその尋問の請求をするかどうかを確かめることは、手続として望ましいが、これを行わなかったとしても直ちに法律(応急的措置法12条1項)違反とはならない。
重要事実
被告人は被害者に対し、右手に短刀を提げた状態で脅迫的な文言を申し向けた。その際、被告人の背後には多数の共犯者が控えていた。第一審において証人の証言が録取された公判調書が証拠とされたが、裁判所は被告人に対し、当該証人を尋問する権利の告知や尋問請求の有無の確認を行わなかった。被告人側からも当該証人の尋問請求はなされなかった。
あてはめ
本件では、被告人側から証人の尋問請求がなされておらず、裁判所が改めて尋問権を告知しなかったとしても、当時の法令に照らして違法ではない。また、事実認定の点においても、被告人が短刀を右手に提げ、背後に多数の共犯者がいたという状況は、被害者が手出しできないほどに脅かされたと認めるに足り、証拠に基づく合理的な認定であるといえる。
結論
被告人に対する尋問権の告知や請求の確認を欠いたとしても違法ではなく、原判決の証拠調べ手続および事実認定に瑕疵はない。
実務上の射程
新刑事訴訟法下における321条以下の伝聞例外や、被告人の反対尋問権(憲法37条2項)の解釈において参照される。手続的保障が不十分であっても、被告人側が権利を行使する機会を実質的に放棄している場合や、反対尋問の機会が制度的に保障されている場合には、形式的な告知欠損のみでは直ちに違法とならないとする判断の基礎となる。
事件番号: 昭和24(れ)3096 / 裁判年月日: 昭和25年5月2日 / 結論: 棄却
被告人らの刀劍所持は強盜の犯行の前後にわたるものであつて、強盜の手段として所持したのではなく、かつ刀劍の所持と強盜行爲との間に通常手段結果の關係があるというわけではないのであるから、原審が本件に刑法第五四條を適用せずして第四五條を適用したのは適法である。
事件番号: 昭和23(れ)1388 / 裁判年月日: 昭和24年3月5日 / 結論: 棄却
一 直接審理主義や口頭辯論主義の建前をとることは必ず被告人の公判廷における供述のみに措信しなければならぬという結論を生むものではない、被告人の公判廷に於ける後述と所論の如き公判外における供述とが異る場合にその何れを採用するかは事實審裁判所が審理の手續を適法に履踐する以上自由に取捨判斷することが出來ることは當裁判所の屡々…
事件番号: 昭和24(れ)2366 / 裁判年月日: 昭和24年12月13日 / 結論: 棄却
たとえ押收手續に所論の様な違法があつたとしても押收物件につき公判迄において適法の證據調が爲されてある以上(此のことは記録によつて明である)これによつて事實の認定をした原審の措置を違法とすることは出來ない、押收物は押收手續が違法であつても物其自体の性質、形状に變異を來す筈がないから其形状等に關する證據たる價値に變りはない…
事件番号: 昭和26(れ)713 / 裁判年月日: 昭和26年7月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択や事実認定に関する非難、および量刑不当の主張は、刑事訴訟応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の証拠取捨選択および事実認定を非難し、あわせて量刑が不当であるとして上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):原審の専権事項で…