判旨
犯罪の成立において、行為者が具体的にいかなる法令によってその行為が禁止されているかを知らなかったとしても、それ自体は故意の成立を阻却しない。
問題の所在(論点)
刑法上の故意の成立において、自身の行為が具体的な法令によって禁止されていることを認識している必要があるか(違法性の認識の要否)。
規範
犯罪の成否に関し、故意が認められるためには、自己の行為が具体的にどの法令に違反するかという「違法性の認識(法令の不知)」までは必要とされない。
重要事実
被告人が、法令によって禁止されている行為を行った。弁護側は、被告人が当該行為を禁止する具体的な法令を知らなかったことを理由に、故意が阻却される、あるいは犯罪成立には故意以外に違法性の認識が必要であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、引用された判例を前提としつつ、「具体的にいかなる法令によってその行為が禁止されているかを知らなかったとしても、故意の成立を阻却するものではない」と判示した。また、犯罪の成立要件として、故意とは別に「違法性の認識」を必要とするとの解釈も否定した。
結論
本件上告は棄却された。具体的な法令の不知は故意を阻却せず、犯罪は成立する。
実務上の射程
刑法38条3項(法の不知)に関するリーディングケースの一つ。答案上では、故意の認定において「違法性の意識の可能性」は必要だとしても、「具体的な法令の認識」までは不要であることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)5111 / 裁判年月日: 昭和28年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】銃砲等所持禁止令違反罪の成立には故意が必要であり、自宅に刀剣が存在することを知りながら、その処分を命じたのみで結果を確認せず放置した場合には、所持の犯意が認められる。 第1 事案の概要:被告人は、自宅に刀剣が存在することを認識していた。被告人は当時、二男に対し当該刀剣の処分を命じたものの、その後、…
事件番号: 昭和26(れ)157 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書において、原判決における事実の認定に誤りがあること、および、宣告された刑の量定が不当に重いことを主張した。 第2…
事件番号: 昭和23(れ)1556 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
一 本件のごとき銃砲等所持禁止令違反事件の審理においては必ずしも常に所持の目的物(本件においては拳銃等)を公判廷において證據調をしなければ、處罰ができないと言うものではない。 二 銃砲等所持禁止令違反の犯罪において犯罪の構成要件は當該法令に掲げる目的物を所持することである所論「法廷の特別の理由がないのに拘わらず」という…
事件番号: 昭和25(れ)529 / 裁判年月日: 昭和25年7月28日 / 結論: 棄却
昭和二三年二月二四日附米國第八軍司令部より日本政府内務省保局長宛の「日本の刀劍並びに鉄砲の回收、類別及び處分」と題する覺書は一定の要件の下に、刀劍並に鉄砲の登録申請の受付及び處理を昭和二三年六月一日まで延長を許可したものであつて、一旦成立した銃砲等所持禁止令第一條違反の罪に消長を來すものではない。(昭和二三年(れ)第一…
事件番号: 昭和26(れ)450 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述が犯罪事実を認めるものでない場合、それは「自白」には当たらない。また、自白以外の証拠も併せて事実認定に用いられているのであれば、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原審は第一審…