一 本件のごとき銃砲等所持禁止令違反事件の審理においては必ずしも常に所持の目的物(本件においては拳銃等)を公判廷において證據調をしなければ、處罰ができないと言うものではない。 二 銃砲等所持禁止令違反の犯罪において犯罪の構成要件は當該法令に掲げる目的物を所持することである所論「法廷の特別の理由がないのに拘わらず」という點は本件犯罪の構成要件をなすものではないから證據によつて認定する必要はない却つて法定の特別の理由があることは舊刑訴法第三六〇條第二項にいわゆる「法律上犯罪の成立を阻却すべき原由」に該當するわけである。從つて被告人の側から法定の特別の理由の存在について主張がない限り、原判決のごとく「法定の特別の理由がないのに拘わらずと」認定しても差支ない。
一 銃砲等所持禁止令違反行爲の處罰に當り所持の目的物を公判廷において取調べることの要否 二 銃砲等所持禁止令違反の罪の法定の特別の理由の性質と舊刑訴法第三六〇條第二項
銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止例1條1項,舊刑訴法336條,舊刑訴法360條2項
判旨
銃砲等所持禁止令違反において、「法定の特別の理由」の不在は構成要件要素ではなく犯罪成立阻却事由に該当し、被告人側から主張がない限り特段の認定は不要である。また、憲法38条3項の「本人の自白」には、当該判決裁判所の公判廷における自白は含まれない。
問題の所在(論点)
1. 銃砲等所持禁止令違反における「法定の特別の理由」の不在は、検察官が証明すべき構成要件要素か、それとも被告人側が主張すべき犯罪成立阻却事由か。2. 憲法38条3項の補強証拠を要する「自白」に、受訴裁判所の公判廷における自白が含まれるか。
規範
1. 銃砲等所持禁止令における「法定の特別の理由がないのに拘わらず」という点は、犯罪の構成要件ではなく、法律上の犯罪成立阻却事由に該当する。したがって、被告人側から当該理由の存在について具体的な主張がない限り、証拠による認定を要しない。2. 憲法38条3項(および当時の刑訴応急措置法10条3項)にいう「本人の自白」とは、公判廷外の自白を指し、当該判決裁判所の公判廷における自白はこれに含まれない。
事件番号: 昭和23(れ)1577 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件…
重要事実
被告人は、銃砲等所持禁止令に違反して拳銃等を所持したとして起訴された。被告人は捜査段階および公判廷において、警察へ届けようとしたが怠った旨を自供していたが、弁護人は「法定の特別の理由がないこと」の証拠による認定が不十分であること、および自白のみによる処罰は憲法38条3項等に反することを理由に上告した。
あてはめ
1. 「法定の特別の理由」については、本件犯罪の構成要件をなすものではなく、むしろ成立阻却事由(旧刑訴法360条2項)に当たる。本件では被告人側から理由の存在について主張がないのみならず、届出を怠った旨を自白しているため、原審が「特別の理由がない」と認定したことに違法はない。2. 自白の補強証拠については、憲法38条3項の「本人の自白」に公判廷での自白は含まれないとする判例の法理に照らし、公判廷自白がある以上、他の補強証拠がなくとも有罪認定が可能である。
結論
被告人側から特別の理由の主張がない以上、その不在を証拠で認定する必要はなく、また公判廷自白があるため補強証拠を欠くとの主張も理由がないとして、上告を棄却する。
実務上の射程
現在の刑事訴訟法下では、公判廷自白であっても補強証拠が必要とされている(刑訴法319条2項)ため、本判決の自白に関する判断は現行法下では適用されない点に注意が必要である。一方で、犯罪成立阻却事由(違法性阻却事由や責任阻却事由等)の立証責任の所在や主張の要否に関する議論においては、構成要件要素との区別という観点から参照しうる。
事件番号: 昭和23(れ)1514 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
判決書に被告人の住居を記載するのは、被告人の氏名、年齢、職業等の記載と相俟つて被告人の同一性を特定するためである。されば、原判決が被告人の住居として「三百九十二番地」と記載したことが假りに所論のように「三百九十三番地」誤記であるとしても、これがために前記の特定を害するわけではないから原判決には所論のような違法はなく論旨…
事件番号: 昭和26(あ)3022 / 裁判年月日: 昭和27年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として憲法違反を主張する場合であっても、具体的にその理由を明らかにしないときは、上告の適法な理由とは認められない。 第1 事案の概要:被告人が憲法違反を主張して上告を申し立てたが、その具体的な理由については何ら明らかにしていなかった事案である。 第2 問題の所在(論点):上告理由として憲法…
事件番号: 昭和26(れ)1670 / 裁判年月日: 昭和26年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に違反したとしても、その理由のみによる破棄差戻しは裁判の進行を一層阻害し憲法の保障に矛盾するため、判決に影響を及ぼす事由には当たらない。また、公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう補強証拠を必要とする自白には含まれない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件…
事件番号: 昭和26(れ)854 / 裁判年月日: 昭和26年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、適法な証拠調べを経た押収品等の物証が存在する場合には、憲法38条3項の「自白が被告人に不利益な唯一の証拠である場合」には当たらず、有罪判決を言い渡すことができる。 第1 事案の概要:被告人が脇差や日本刀等の所持により起訴された事案において、原審の公判調書には「押収品は全部これを…