一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件に適用するかは經過法の立法に際して諸般の事情を勘案して決せらるべき問題で法律に一任されてをるものである、從つて刑訴施行法第二條が新法施行前に公訴の提起があつた事件に付ては新法施行後もなお舊法及應急措置法による旨を規定し新法を適用しないことにしたのは何等憲法に違反するものではなく、又所論の如き理由からこれを憲法違反と解せなければならないものでもない。 三 公判調書に被告人が身体の拘束を受けなかつたという記載がないからといつて、それだけで直ちに、被告人が公判廷において身体の拘束を受けたということはできない。
一 公判廷における自白と憲法第三八條第三項刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」 二 刑訴施行法第二條の合憲性 三 被告人の身体拘束の事実の有無と公判調書の記載
憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項,旧刑訴法64条,旧刑訴法60条2項,刑訴施行法2條
判旨
公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「本人の自白」には含まれず、補強証拠なしにこれのみで有罪とすることが可能である。また、公判調書に身体の拘束を受けなかった旨の記載がないからといって、直ちに身体拘束があったと推断することはできない。
問題の所在(論点)
1. 公判廷における被告人の自白は憲法38条3項の「本人の自白」に含まれ、補強証拠を必要とするか。 2. 公判調書に身体不拘束の記載がない場合、身体の拘束があったと推断されるか。 3. 新刑事訴訟法施行前に起訴された事件について、旧法を適用し量刑不当を上告理由から除外する施行法の規定は憲法に違反するか。
規範
1. 公判廷における被告人の有罪の自白は、憲法38条3項及び旧刑事訴訟法応急措置法10条3項にいう「本人の自白」には当たらない。したがって、補強証拠がなくとも当該自白のみに基づいて有罪判決を下すことができる。 2. 公判調書において被告人が身体の拘束を受けなかった事実は必要的記載事項ではない。また、公判手続の適用範囲を定める経過法の立法は立法府の裁量に委ねられており、新刑事訴訟法施行前の事件に旧法等を適用する規定は憲法に違反しない。
事件番号: 昭和23(れ)1514 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
判決書に被告人の住居を記載するのは、被告人の氏名、年齢、職業等の記載と相俟つて被告人の同一性を特定するためである。されば、原判決が被告人の住居として「三百九十二番地」と記載したことが假りに所論のように「三百九十三番地」誤記であるとしても、これがために前記の特定を害するわけではないから原判決には所論のような違法はなく論旨…
重要事実
被告人は刑事事件において、公判廷で自白を行った。原審の公判調書には、被告人が身体の拘束を受けていなかった旨の記載が欠けていた。また、被告人は第一審で保釈決定を受け、その後保釈が取り消された事実はなかったが、上告審において、公判廷での自白に補強証拠が必要であることや、公判調書の記載不備による身体拘束の推定、および量刑不当を理由とする上告を制限する刑訴施行法の違憲性を主張して争った。
あてはめ
1. 公判廷での自白については、判例(昭和23年7月29日大法廷判決)に従い、補強証拠を要する「本人の自白」には該当しないと判断される。 2. 被告人は保釈中であり、公判審理の実際から身体拘束は考え難い。公判調書に身体不拘束の記載がないことは、記載事項の性質上、身体拘束の事実を直ちに推断させるものではない。 3. 経過法の制定は諸般の事情を勘案して法律に一任されており、旧法及び応急措置法を継続適用することは人権尊重の観点からも憲法違反とはいえない。
結論
1. 公判廷の自白に補強証拠は不要である。 2. 公判調書の記載不備から身体拘束の事実は認められない。 3. 量刑不当を上告理由としない施行法の規定は合憲であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
現代の刑事訴訟法319条2項の下では、公判廷の自白であっても補強証拠が必要とされており、本判決の自白に関する規範は現行法上は変更されている点に注意が必要。一方で、経過措置に関する立法裁量や公判調書の記載事項に関する判断枠組みは、法理として参照し得る。
事件番号: 昭和26(れ)832 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、公判廷外における自白を指し、当該審級の公判廷における被告人の自白はこれに含まれない。したがって、公判廷における自白のみに基づいて有罪判決を言い渡しても、同項には違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、犯罪事実について第一審から争っていたが、控訴審…
事件番号: 昭和23(れ)1556 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
一 本件のごとき銃砲等所持禁止令違反事件の審理においては必ずしも常に所持の目的物(本件においては拳銃等)を公判廷において證據調をしなければ、處罰ができないと言うものではない。 二 銃砲等所持禁止令違反の犯罪において犯罪の構成要件は當該法令に掲げる目的物を所持することである所論「法廷の特別の理由がないのに拘わらず」という…
事件番号: 昭和26(れ)450 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の公判廷における供述が犯罪事実を認めるものでない場合、それは「自白」には当たらない。また、自白以外の証拠も併せて事実認定に用いられているのであれば、憲法38条3項(自白のみによる有罪判決の禁止)の違反は認められない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、原審は第一審…
事件番号: 昭和26(あ)952 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白がある場合、相被告人の供述を当該被告人の自白に対する補強証拠とすることができる。これは憲法38条3項の趣旨に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する刑事事件において、原判決が相被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し弁護…