判決書に被告人の住居を記載するのは、被告人の氏名、年齢、職業等の記載と相俟つて被告人の同一性を特定するためである。されば、原判決が被告人の住居として「三百九十二番地」と記載したことが假りに所論のように「三百九十三番地」誤記であるとしても、これがために前記の特定を害するわけではないから原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。
被告人の住居の番地の誤記と上告理由
舊刑訴法69條1項
判旨
裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法38条3項にいう「自白」には含まれず、これのみで有罪判決の根拠とすることが可能である。
問題の所在(論点)
公判廷における被告人の自白が、憲法38条3項に規定される補強証拠を必要とする「自白」に含まれるか(自白の補強法則の適用範囲)。
規範
憲法38条3項が「自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合」に有罪とできないと規定する「自白」には、当該裁判所の公判廷における自白は含まれない。したがって、公判廷での自白は補強証拠がなくとも有罪認定の基礎とすることができる。
重要事実
被告人AおよびBは、コルト式小型拳銃1挺および実包1個を隠匿所持した。原審は、被告人らの公判廷における自白を証拠として犯罪事実を認定した。これに対し、弁護側は、当該自白が憲法38条3項および刑訴応急措置法10条3項(当時)の禁止する「唯一の証拠としての自白」にあたると主張して上告した。また、拳銃の弾丸発射機能の認定や、判決書上の住居の誤記についても違法を主張した。
事件番号: 昭和23(れ)1577 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件…
あてはめ
最高裁大法廷判例(昭和23年(れ)397号)の趣旨に照らせば、公判廷における自白は憲法上の「自白」には該当しない。本件において、原審が被告人の公判廷での供述に基づき事実を認定したことは、補強法則に違反するものではない。なお、事実としてコルト式小型拳銃である以上、故障の特段の事情がない限り弾丸発射機能は推知され、住居の記載に誤りがあっても被告人の同一性が特定されている限り判決の効力に影響しない。
結論
公判廷における自白は憲法38条3項の「自白」に含まれず、補強証拠なしに犯罪事実を認定できる。本件各上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は旧法および応急措置法下の判断であるが、現行刑事訴訟法319条2項は「公判廷における自白」にも補強法則を適用すると明文で定めたため、実務上、公判廷自白の補強不要説としての射程は失われている。ただし、銃器の機能推知や被告人の特定に関する判示部分は、現在でも事実認定の合理性や判決の更正・特定に関する議論において参照の余地がある。
事件番号: 昭和26(れ)832 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、公判廷外における自白を指し、当該審級の公判廷における被告人の自白はこれに含まれない。したがって、公判廷における自白のみに基づいて有罪判決を言い渡しても、同項には違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、犯罪事実について第一審から争っていたが、控訴審…
事件番号: 昭和24(れ)1066 / 裁判年月日: 昭和24年12月22日 / 結論: 棄却
一 原判決が判示第一事實を認定した證據としてA、Bに對する各司法警察官の聽取書中判示第一に照應する窃盗事実の各供述記載を舉げていること並びに記録中に右兩名に對する聽取書と題する書類の存在しないことは所論のとおりである。しかし、本件記録中に右兩名に對する司法警察官の訊問調書と題する書類が存在しその調書には判示第一に照應す…
事件番号: 昭和28(あ)1053 / 裁判年月日: 昭和29年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみによって有罪とされないとする補強証拠の要否について、第一審判決が自白の他に補強するに足りる諸証拠を挙示している場合には、憲法38条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびCらは拳銃の所持等について起訴された。被告人Aは公判等において犯行を自白していたが、上告審において「…
事件番号: 昭和23(れ)1556 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
一 本件のごとき銃砲等所持禁止令違反事件の審理においては必ずしも常に所持の目的物(本件においては拳銃等)を公判廷において證據調をしなければ、處罰ができないと言うものではない。 二 銃砲等所持禁止令違反の犯罪において犯罪の構成要件は當該法令に掲げる目的物を所持することである所論「法廷の特別の理由がないのに拘わらず」という…