一 原判決が判示第一事實を認定した證據としてA、Bに對する各司法警察官の聽取書中判示第一に照應する窃盗事実の各供述記載を舉げていること並びに記録中に右兩名に對する聽取書と題する書類の存在しないことは所論のとおりである。しかし、本件記録中に右兩名に對する司法警察官の訊問調書と題する書類が存在しその調書には判示第一に照應する窃盗事實の各供述記載が存するから右の「聽取書」とあるのは「訊問調書」の誤記であること明白であるされば原判決の證據説明は、證據の標目の表示の誤りに過ぎないもので、これを以て虚無の證據を斷罪の資料に供したものとはいえない。 二 記録によれば、原審辯護人豊田求は、所論原審第二回公判期日の外同第一回公判期日においてもすべて適法な召喚状の送達を受けながらいずれも故なく出頭しないこと明白であるから、原審がその辯論を聽かないで辯論を終結したからといつて不法に同辯護人の辯護權の行使を制限したとはいえない。
一 證據説明における證據の標目の誤記と虚無の證據 二 第一回及第二回公判期日に適法な召喚状を受けながら故なく出頭しない辯護人と辯護權の不當制限
舊刑訴法336條,舊刑訴法338條1項,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法320條1項,舊刑訴法410條11號
判旨
憲法38条3項にいう「本人の自白」には、判決裁判所の公判廷における自白は含まれない。したがって、公判廷での自白がある場合には、他に補強証拠がなくても有罪判決を言い渡すことができる。
問題の所在(論点)
公判廷における自白が憲法38条3項の「本人の自白」に含まれ、有罪判決に補強証拠を必要とするか(公判廷の自白と補強法則の適用範囲)。
規範
憲法38条3項が「何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」と規定する補強法則の対象たる「本人の自白」には、判決裁判所の公判廷における自白は含まれない。
重要事実
事件番号: 昭和23(れ)1514 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
判決書に被告人の住居を記載するのは、被告人の氏名、年齢、職業等の記載と相俟つて被告人の同一性を特定するためである。されば、原判決が被告人の住居として「三百九十二番地」と記載したことが假りに所論のように「三百九十三番地」誤記であるとしても、これがために前記の特定を害するわけではないから原判決には所論のような違法はなく論旨…
少年である被告人は、窃盗等の事実について原審の公判廷で自白をした。原審には有力な弁護人が在廷しており、被告人の自白に対して何ら異議を述べなかった。弁護側は、当該自白が憲法38条3項の「本人の自白」に該当し、補強証拠なしに有罪とすることは憲法違反であるとして上告した。
あてはめ
憲法が補強法則を定めた趣旨は、密室での自白による強制や誤判を防止する点にある。本件において、被告人は少年ではあるものの、公判廷という公開された場において、かつ有力な弁護人が在廷して不当な圧迫がないことが保障された状況で自白を行っている。このような公判廷での自白は、憲法が想定する「本人の自白」には当たらないと解するのが相当である。
結論
公判廷における自白は憲法38条3項の「本人の自白」に含まれないため、これのみを証拠として有罪と認めることは合憲である。
実務上の射程
本判決は公判廷の自白について補強証拠を不要とするが、刑事訴訟法319条2項は「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠を必要としている。実務上は、憲法判断としては不要であっても、法律上の要請として公判廷の自白にも補強証拠が必要となる点に注意して答案を作成する必要がある。
事件番号: 昭和27(あ)3790 / 裁判年月日: 昭和28年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自白のみを証拠として有罪とすることは憲法38条3項に抵触するが、被害者の盗難届等の自白以外の証拠が併存する場合には補強証拠が存在するものとして、同条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは窃盗等の罪に問われ、第一審において有罪判決を受けた。被告人らは自白をしていたが、弁護人は当該判決が…
事件番号: 昭和23(れ)1577 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 しかしその判決をした當該裁判所の公判廷における被告人の自白は、憲法第三八條第三項並びに刑訴應急措置法第一〇條第三項にいわゆる「本人の自白」にあたらないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六八號、同年七月二九日大法廷判決)從つて論旨は採用することができない。 二 しかし新刑訴法を如何なる事件…
事件番号: 昭和26(れ)832 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法38条3項にいう「本人の自白」とは、公判廷外における自白を指し、当該審級の公判廷における被告人の自白はこれに含まれない。したがって、公判廷における自白のみに基づいて有罪判決を言い渡しても、同項には違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、犯罪事実について第一審から争っていたが、控訴審…