一 憲法第三七條第二項は、裁判をもつて、被告人に對し、本件におけるがごとき證人尋問に要した訴訟費用の負擔を命ずることを禁ずるものでないことは、當裁判所の判例とするところであつて(昭和二三年(れ)第三一六號同年一二月二七日大法廷判決)かかる訴訟費用の負擔を被告人に命ずる刑訴法の規定は何ら憲法に違反するものでないことは右判例の趣旨に徴して明瞭である。 二 所論は、當裁判所の判例の變更を求めるものであつて、刑訴法第四〇五條第二號の上告の適法な理由とはいえない。
一 訴訟費用の負擔を被告人に命ずる裁判の合憲性 二 判例の變更を求める主張を理由とする上告の適否
憲法37条2項,刑訴法185條,刑訴法405條2號
判旨
被告人に訴訟費用の負担を命じることは、憲法37条2項が保障する被告人の証人尋問権を侵害するものではなく、合憲である。裁判をもって証人尋問に要した費用を被告人に負担させる刑事訴訟法の規定は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、被告人に対して証人尋問に要した訴訟費用の負担を命じることは、憲法37条2項(被告人の証人尋問権)に違反するか。
規範
憲法37条2項は、全ての証人に対して尋問する機会を被告人に保障するものであるが、裁判によって被告人に対し、証人尋問に要した訴訟費用の負担を命ずることを禁ずるものではない。したがって、被告人に訴訟費用の負担を命じる規定は合憲である。
重要事実
被告人が刑事裁判において有罪判決を受け、その際、証人尋問等に要した訴訟費用の負担を命じられた。被告人は、このような訴訟費用の負担を命じることは、証人尋問権を保障した憲法37条2項に違反し、また憲法31条の適正手続にも反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁の確立した判例によれば、裁判をもって被告人に訴訟費用の負担を命じることは憲法37条2項が禁じるところではない。本件において、被告人に対して証人尋問に要した訴訟費用の負担を命じたことは、同条項の趣旨に照らしても何ら憲法に抵触するものではない。また、憲法31条違反の主張についても、実質的には刑事訴訟法の違反を主張するものにすぎず、適法な上告理由とは認められない。
結論
被告人に訴訟費用を負担させる規定および運用は、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法181条1項に基づく訴訟費用負担命令の合憲性を支える判例である。答案上では、被告人の防御権行使に伴う経済的負担が、公訴提起の正当化や手続の適正化の観点から合憲であると論じる際の根拠として用いることができる。
事件番号: 昭和28(あ)4945 / 裁判年月日: 昭和29年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条2項後段は被告人の公費による証人喚問権を規定しているが、これは被告人に訴訟費用の負担を命じることを禁ずる趣旨ではない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決において訴訟費用の負担を命じられたことに対し、弁護人がこれが憲法37条2項に違反するとして上告を申し立てた事案。なお、原判決(控訴審…