假りに本件窃盜は被告人の所爲であるという點の證據が被告人の供述のみであるとしても、その違憲でないことは、當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一三八二號同二四年一一月二日大法廷判決)の趣旨に徴して明かである。
犯人が被告人であることの證據が自白のみであつても違憲でない
憲法38條3項,刑訴法319條2項
判旨
被告人の自白のみでなく、被害者の被害始末書や第三者の供述調書等を総合して犯罪事実を認定することは、憲法上の自白の補強法則に違反しない。また、仮に特定の事実について直接の証拠が自白のみであっても、判例の趣旨に照らし、直ちに違憲とはならない。
問題の所在(論点)
自白以外の証拠として被害始末書や第三者の供述調書等が存在する場合に、被告人の自白のみによって処罰されないとする憲法38条3項の補強法則に抵触するか。また、犯人が被告人であるという点(犯人特定)の証拠が自白のみである場合の合憲性が問題となる。
規範
憲法38条3項および刑事訴訟法319条2項が定める自白の補強法則において、判示犯罪事実の認定が被告人の供述のみに依拠せず、他の証拠(被害始末書、第三者の供述調書、前科調書等)と総合してなされる限り、証拠法則上の違法はない。また、自白以外の証拠が直接的に犯行を証明するものでなくとも、自白の真実性を担保する補強証拠となり得る。
重要事実
被告人は窃盗罪に問われたが、第一審において判示犯罪事実の認定が行われた。弁護人は、本件窃盗が被告人の所為であるという点について、自白以外の証拠が欠けており、自白のみによる処罰を禁じた憲法38条3項に違反すると主張して上告した。実際の証拠には、被告人の自白のほかに、被害者Bの被害始末書、第三者Cの司法警察員に対する供述調書、および前科調書等が存在していた。
あてはめ
本件では、判示犯罪事実は被告人の供述のみで認定されたわけではなく、Bの被害始末書、Cの供述調書、前科調書等が総合的に評価されている。これらの証拠は、自白の内容を裏付ける補強証拠として機能しており、証拠に基づかない事実認定とはいえない。仮に「本件が被告人の所為である」という直接の点について自白以外の証拠が乏しいとしても、全体の証拠関係から自白の真実性が担保されている以上、憲法および判例の趣旨に反するものではないと解される。
結論
本件事実認定は自白のみによるものではなく、憲法38条3項に違反しない。したがって、原判決が第一審判決を維持した判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の補強法則の適用範囲に関する判例である。答案上では、補強証拠が「犯罪事実の客観的部分」を裏付けるものであれば足り、「犯人との結びつき(犯人性)」までを直接証明する必要はないとする実務上の準則を裏付けるものとして活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)487 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白のみで有罪とされることを禁じた憲法38条3項に関し、原判決が自白以外の証拠に基づき事実認定を行っている場合には、同項違反の主張は前提を欠き失当である。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪事実について起訴され、第一審および控訴審において有罪判決を受けた。弁護人は、控訴審判決(原判決)が…