憲法第三七條第二項の趣旨は、第三者の供述を證據とするには、かならずその者を公判において證人として訊問することを命じたものではなく、したがつて聽取書若しくは供述に代わる書面をもつて證言に代えることを絶對に禁じたものでないことについては當裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一六七號同年七月一九日大法廷判決)。それゆえ、原審が所論A、Bに對する檢察官の各聽取書について刑訴法第三二一條第一項第二號後段の規定により證據として採用することができると判示したことは憲法第三七條第二項に違反するものではない。
憲法第三七條第二項に基く裁判所の證人喚問義務の有無と檢察官の聽取書を刑訴法第三二一條第一項第二號後段の規定により採證できると判示したことの合憲性
憲法37條2項,刑訴法321條1項2號後段
判旨
憲法37条2項は、第三者の供述を証拠とする際に必ず公判での尋問を命じるものではなく、伝聞例外を認める刑訴法321条1項2号後段の規定は同憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法321条1項2号後段に基づき、公判準備または公判期日外の供述を録取した書面を証拠として採用することが、憲法37条2項が保障する「証人を審問する機会」を奪うものとして違憲とならないか。
規範
憲法37条2項の趣旨は、被告人に証人への反対尋問権を保障するものであるが、第三者の供述を証拠とするにあたり、必ずその者を公判において証人として尋問することを命じたものではない。したがって、法が定める一定の要件を満たす場合に、聴取書または供述に代わる書面をもって証言に代える(伝聞例外を認める)ことは、直ちに同憲法に違反するものではない。
重要事実
被告人の刑事事件において、検察官は第三者AおよびBの検察官面前調書を証拠として請求した。原審は、刑事訴訟法321条1項2号後段(供述不能等の要件)に基づき、これらの聴取書を証拠として採用した。これに対し、弁護側は、書面を証言に代えることは憲法37条2項の証人審問権に違反するとして上告した。
あてはめ
最高裁判例の趣旨に照らせば、憲法37条2項は書面を証拠とすることを絶対的に禁じたものではない。本件で原審が適用した刑訴法321条1項2号後段は、証言ができない等の特別の事情がある場合に限定して伝聞証拠の証拠能力を認める規定である。このような伝聞例外の規定に基づき、検察官の聴取書を証拠として採用することは、被告人の防御権と適正な裁判の実現との調和を図るものであり、憲法上の要請に反するとはいえない。また、当該書面が原本ではなく謄本であるといった解釈の問題は、憲法違反の問題ではなく法適用の当否に関する事項である。
結論
刑訴法321条1項2号後段の規定により、被告人以外の者の供述を録取した書面を証拠として採用することは、憲法37条2項に違反しない。
実務上の射程
伝聞例外規定(刑訴法321条以下)の合憲性を支えるリーディングケースである。答案上は、伝聞例外の合憲性が問われた際の根拠として「憲法37条2項は絶対的な対面・尋問を要求するものではない」という一文を添える形で引用する。原本ではなく謄本の証拠能力については、憲法問題ではなく法律解釈の問題として整理されている点に注意が必要である。
事件番号: 平成8(あ)1244 / 裁判年月日: 平成9年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法321条1項2号後段は、憲法37条2項前段の証人尋問権(反対尋問権)の保障に反するものではない。過去の大法廷判決の趣旨に照らし、同条項の合憲性は維持されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は、検察官の面前における供述を記載した書面を証拠とすることを認める刑事訴訟法321条1項2号後段…
事件番号: 昭和26(あ)1111 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
刑訴第三二一条第一項第二号但書の規定は、検察官の面前における供述を録取した書面を証拠とするにあたつては該書面の供述が右公判準備又は公判期日における供述より信用すべき特別の情況が存するか否かは結局事実審裁判所の裁量にまかされているものと解するのが相当である。