論旨第一點は、原判決が本件犯罪事實中の共謀の點につき被告人の自白のみを證據にしたのは憲法第三八條第三項および刑事訴訟法第三一九條第二項違反である。と非難する。なるほど第一審判決の舉げた證據中共謀の點の證據は被告人の自白以外にはないが、しかし、犯罪事實の一部については本人の自白以外に認定資料がない場合でも、舉示の證據を綜合して判示事實全体が認定できる以上、その認定は憲法違反でない旨は、當裁判所大法廷判例の明示するところである。(昭和二二年(れ)第一五三號、同二三年六月九日判決)。その判例もまた共謀つ點に關しそして舊刑訴法下の判例であるが、新法下にも適切であのて、論旨は理由がない。
共謀の點につき自白のみを證據とした判決と憲法第三八條第三項刑訴法第三一九條第二項
憲法38條3項,刑訴法319條2項
判旨
犯罪事実の一部である共謀の点について被告人の自白以外に証拠がない場合であっても、他の証拠を総合して犯罪事実全体を認定できるのであれば、憲法38条3項及び刑事訴訟法319条2項に違反しない。
問題の所在(論点)
犯罪事実の一部である「共謀の事実」について、自白のみで認定することが補強証拠の原則(刑事訴訟法319条2項)に抵触するか。言い換えれば、補強証拠は犯罪事実の細部すべてに及んでいる必要があるか。
規範
自白の補強証拠(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)は、犯罪事実の全部について個別に必要とされるものではない。犯罪事実の一部について本人の自白以外に認定資料がない場合でも、挙示された他の証拠を総合して判示事実全体が認定できるのであれば、自白の証明力を補強するに足りる証拠があるものと解される。
重要事実
被告人が関与したとされる犯罪事実について、第一審判決が共謀の事実を認定するにあたり、被告人の自白以外に直接的な証拠を挙げていなかった事案。弁護人は、共謀という犯罪事実の重要な一部について自白のみで認定したことは、補強証拠の原則を定めた憲法及び刑事訴訟法に違反するとして上告した。
あてはめ
判例は、犯罪の構成要件をなす各事実ごとに補強証拠を要するとは解さない。本件においては、共謀の点について直接的な補強証拠が欠けていたとしても、記録に示された他の客観的な証拠を総合することで、自白に係る犯罪事実全体の真実性が担保されている。したがって、認定された犯罪事実全体を支える証拠群が存する以上、共謀の事実に特化した補強証拠がなくとも、自白による認定は適法であるといえる。
結論
共謀の点につき被告人の自白のみで認定しても、判示事実全体を認定できる他の証拠がある限り、憲法38条3項及び刑事訴訟法319条2項に違反しない。
実務上の射程
共謀共同正犯における「共謀」や、構成要件の一部に関する補強証拠の要否を論じる際の必須判例である。答案では、実質説(真実性の担保)の立場から「補強証拠は犯罪事実の全範囲に及ぶ必要はなく、自白の真実性を保障するに足りるものであれば足りる」とする規範の具体例として活用する。
事件番号: 昭和24(れ)172 / 裁判年月日: 昭和25年2月7日 / 結論: 棄却
一 論旨第一點は、原審公判調書に被告人が「公判廷で身体の拘束を受けずとの記載がない」ことを指摘し、被告人の法廷における身体不拘束は「たとえ保釋中であると否とを問わず一つに之を公判調書に明記してこれを證明せなければならない」とし、この點の不備を以て刑事訴訟法第四一一條の事由あるものとするのである。しかしながら、本件公判期…