判旨
恐喝罪の成立を認定するにあたり、共犯者である「幹部」や「若い者」の氏名、人数、共謀の日時・場所等が具体的に特定されていなくとも、犯罪の構成要件を充足する事実が認められる限り、判決に理由不備の違法はない。
問題の所在(論点)
恐喝罪の認定において、共犯者の氏名・人数や共謀の具体的な日時・場所を詳細に特定しないまま有罪とすることが、判決に理由の不備や齟齬(刑事訴訟法上の違法)をもたらすか。
規範
犯罪事実の認定において、共犯関係が存在する場合であっても、実行行為の内容や恐喝の手段・結果等の構成要件に該当する具体的事実が証拠によって認められるのであれば、共犯者の氏名や具体的な共謀の時、所が厳密に特定されていることは必ずしも必要ではない。
重要事実
被告人が暴力団A組に属しているという事実に基づき、同組の幹部からの指示を受け、配下の「若い者」らと共謀して恐喝を行ったとして起訴された事案。原審は、幹部の氏名や人数、具体的な指示の日時・場所、および共謀した「若い者」の特定や共謀の詳細な日時・場所を明示せずに有罪判決を下した。これに対し、被告人側が理由不備等を理由に上告した。
あてはめ
原判決は、暴力団の組織的背景やその他の証拠を総合して恐喝事実を認定している。幹部の指示や「若い者」との共謀という態様が示されている以上、その具体的な氏名や時、所が不明であったとしても、被害者を畏怖させ財物を交付させたという恐喝罪の本質的構成要件の認定を左右するものではない。証拠の取捨選択は裁判所の裁量に属し、これに基づき犯罪事実が肯認できる以上、理由不備の違法は認められない。
結論
共犯者の詳細や共謀の具体的時、所が特定されていなくとも、恐喝罪の成立を妨げるものではなく、判決は正当である。
実務上の射程
組織犯罪等の実務において、共犯者の特定が困難な場合でも、犯行の組織的な性格や実行行為の具体性が立証されれば、判決における事実摘示として必要十分であることを示す。訴訟法上の理由不備(現在の刑訴法378条4号)の回避基準として参照される。
事件番号: 昭和23(れ)1262 / 裁判年月日: 昭和23年12月18日 / 結論: 棄却
一 被告人が直接被害者から、財物の交付を受けようと、第三者を介してこれを受けようと、恐喝罪の成否に影響するところはない。 二 被告人が恐喝行爲をするに當つて、他に共犯關係に立つものがあつたとしても、被告人の犯罪行爲を判示するには、被告人自身の「罪トナルヘキ事實」を明らかにすればよい。