恐喝取財罪の成立するためには、所謂相手方に対する害悪の告知として必ずしも明示の言動を必要とするものではなく、自己の経歴性行及び職業上の不法な威勢等を利用して財物の交付を要求し相手方をしてもその要求を容れないときは不当な不利益を醸される危障があるとの危惧の念を拘かしめるような暗黙の告知をなせば足るものといわなければならない(昭和二四年(れ)第九〇八号同年九月二九日第一小法廷判決参照)
恐喝罪における害悪告知の方法
刑法249条
判旨
恐喝罪(刑法249条)における「脅迫」としての害悪の告知は、必ずしも明示的な言動を必要とせず、自己の経歴や不法な威勢を利用して、要求を拒めば不当な不利益を被るとの危惧の念を相手方に抱かせる暗黙の告知であっても成立する。
問題の所在(論点)
刑法249条1項の恐喝罪における「脅迫」として、明示的な害悪の通知がなされていない場合でも、背景にある組織的威力や不法な威勢を利用した金員要求が「害悪の告知」に該当するか。
規範
恐喝罪の成立に不可欠な「害悪の告知」は、必ずしも明示の言動を必要としない。自己の経歴、性行、職業上の不法な威勢等を利用して財物の交付を要求し、相手方に対し、もしその要求を容れないときは不当な不利益を醸される危険があるとの危惧の念を抱かしめるような「暗黙の告知」をなせば、脅迫として十分である。
重要事実
被告人は、多数の若者を輩下に擁して「C家」の名で興行師をしており、不良連中の集団として不法な威勢を有していた。被告人は、被害者(A工業株式会社社長B)に対し、何らかの申し出(詳細な言辞の内容は判決文からは不明)を行い、C一家を背景とする威力を示して暗に金員の交付を求めた。被害者Bは、要求を拒むことで生じる後難を恐れ、畏怖して現金1万円を交付した。
あてはめ
本件において、被告人は「C家」という不良集団の首領としての地位にあり、世間体や後難を恐れさせるに足りる「不法な威勢」を有していたといえる。このような背景を背景に、被告人が金員の交付を求めたことは、相手方に対し、要求を拒絶すればC一家による不利益な報復を受けるとの危惧を抱かせるに足りる「暗黙の告知」にあたると解される。被害者Bが実際に後難を恐れて畏怖し、1万円を交付していることから、暗黙の害悪の告知による恐喝行為が認められる。
結論
明示の言辞がなくとも、不法な威勢を利用した暗黙の告知により相手方を畏怖させ財物を交付させた場合、恐喝罪が成立する。
実務上の射程
暴力団関係者や組織的威勢を背景に持つ者が、婉曲的な表現で金品を要求する事案における「脅迫」の認定基準として機能する。答案上は、明示的な害悪の告知がない場合でも、行為者の社会的属性や周囲の状況から「要求を拒否した際の不利益」を示唆していると評価できるかを検討する際に本規範を引用すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)808 / 裁判年月日: 昭和23年12月7日 / 結論: 棄却
原判決理由は右A、B兩名が被告人の要求に應じないときは如何樣なことをされるかも知れないと意識される樣な言語舉動を示し其爲め右兩名は如何樣のことをされるかも知れないと畏怖心を起したものである旨を説示したと解されるのであつて、如何樣なことをされるかも知れないということは一見漠然としているが、被害者の生命、身體、自由、名譽、…
事件番号: 昭和29(あ)2166 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が自己に関する不利な風評を被害者が知っていることに乗じ、金員の提供に応じなければ危害を加える旨を暗示して交付させた行為は、恐喝罪を構成する。 第1 事案の概要:被告人は、被害者Aが被告人に関する特定の風評(判決文からは具体的な内容は不明)を知っていることを認識していた。被告人は、その状況に乗…