原審が所論司法警察官の作成に係る押収調書の記載を證據に採つて原判示の犯罪事實認定の一資料としたことは所論のとおりである、しかるに原審公判調書を精査する原審が右押収調書に付き公判において刑事訴訟法所定の證據調をした形跡がない。されば原審は適法な證據調手續を經ない證據によつて事實を認定した違法あるものという外なく論旨は理由がある。しかして右違法は判決主文に影響を及ぼす虞あるものであるから此の點において原判決は破毀を兔れない。(昭和二三年(れ)第六八四號、同年一二月二七日言渡大法廷判決)
適法な證據調を經ない司法警察官作成の押収調書の記載を採證した判決の違法
舊刑訴法336條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法411條
判旨
適法な証拠調べ手続を経ていない書面を事実認定の資料とすることは刑事訴訟法上許されず、そのような証拠に基づく事実認定には判決に影響を及ぼす違法がある。
問題の所在(論点)
公判において適法な証拠調べ手続を経ることなく、書面を事実認定の資料として採用することが許されるか。また、その手続的瑕疵が判決の破棄事由となるかが問題となる。
規範
裁判所が特定の書面を事実認定の資料とするためには、刑事訴訟法所定の適法な証拠調べ手続を経なければならない。証拠調べ手続を経ていない証拠によって事実を認定することは、証拠裁判主義の観点から許されない違法な手続である。
重要事実
原審において、司法警察官が作成した押収調書が犯罪事実認定の資料として採用された。しかし、原審の公判調書を精査しても、当該押収調書について刑事訴訟法が定める証拠調べ手続が実施された形跡が認められなかった。
あてはめ
本件では、原審が押収調書を証拠として採用しているものの、公判においてこれを証拠調した形跡がない。これは、刑事訴訟法が要請する適法な証拠調べ手続を欠いたまま事実認定を行ったことを意味する。このような手続違背は、証拠の採否及び事実認定の適法性を著しく損なうものであり、判決主文に影響を及ぼすおそれがあるといえる。
結論
適法な証拠調べ手続を経ない証拠によって事実を認定した違法があるため、原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑訴法317条)および証拠調べの手続的厳格性を強調する事案である。答案上は、証拠調べ手続の不備が「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」(刑訴法379条、405条等)に該当することを論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)508 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書の一部が破損している場合であっても、他の記録等から刑事訴訟法291条2項の冒頭手続(起訴状の朗読等)が適法に履行されたことが認められるならば、訴訟手続に法令違反はない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案において、原審の公判調書の一部が破損していた。弁護人はこれを理由に、刑事訴…