一 被告人が公判廷で身體の拘束を受けた事實の有無は、公判調書の記載要件でないこと舊刑訴第六〇條(新刑訴第四八條刑訴規則第四四條参照)の規定に照し明白であるから所論のごとく必ず公判調書にこれを明記しなければならぬものと言うことはできない。 二 所論舊刑訴第六四條(新刑訴第五二條参照)の規定は、公判期日における訴訟手続で公判調書に記載されたものは、公判調書のみにより證明すべく、これが反證を許さないという趣旨であつて記載なき手続の有無又は適否の證明に關する規定ではないから、公判調書に被告人の身體拘束の有無につき記載を缺いたからと言つて公判調書を無効だとともいえないのみならず、これを以て直ちに被告人の身體を拘束したものともいえない。そして本件では被告人の身體を拘束した事實を認むべき資料は何等存在しないのであるから所論は採るを得ない。
一 被告人が公判廷で身體の拘束を受けた事實の有無を公判調書に記載の要否 二 舊刑訴第六四條の法意と被告人の身體拘束の有無
舊刑訴法60條,舊刑訴法64條
判旨
被告人が公判廷で身体の拘束を受けた事実は公判調書の必要的記載事項ではなく、記載がないからといって直ちに身体拘束があったとはいえない。また、公判調書の証明力(刑訴法52条)は記載された事項についてのみ及び、記載のない手続の有無については反証が許される。
問題の所在(論点)
被告人の身体拘束の有無が公判調書の必要的記載事項に含まれるか。また、公判調書に記載のない手続事項について、刑訴法52条(旧刑訴法64条)に基づく絶対的証明力の効力が及ぶか。
規範
公判廷における被告人の身体拘束の有無は、刑事訴訟法48条および同規則44条が定める公判調書の必要的記載事項には当たらない。また、同法52条が規定する公判調書の絶対的証明力は、調書に記載された事項にのみ及び、記載のない手続の有無や適否については同条の適用を受けない。
重要事実
被告人が公判廷において不当に身体を拘束された状態で審理が行われたと主張し、上告した事案。被告人側は、公判調書に身体拘束の有無に関する記載がないことをもって、身体拘束があったものと推認されるべきであり、かつ調書の無効を主張した。なお、記録上、被告人が身体を拘束されていたことを示す客観的な資料は存在しなかった。
あてはめ
被告人の身体拘束の事実は、法規(旧刑訴法60条、現48条等)上、公判調書への記載が義務付けられた事項ではない。したがって、記載を欠くことで調書が当然に無効となるわけではない。また、刑訴法52条は「記載されたもの」のみが調書によって証明されるべきとする規定であり、記載がない場合にその事実(身体拘束)がなかったことまでを証明するものではない。本件では身体拘束を認める資料が存在しない以上、不当な拘束があったとは認められない。
結論
被告人の身体拘束の有無は公判調書の必要的記載事項ではなく、記載の欠如が直ちに手続の違法や調書の無効を意味するものではない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法52条の「公判調書の証明力」の範囲を画定する際に重要となる。調書に記載がある事項については、他の証拠による反証が許されない「排他的証明力」を有するが、記載のない事項については自由な証拠によってその存否を立証できるという、実務上の立証責任と証明対象の限界を示している。
事件番号: 昭和27(あ)508 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公判調書の一部が破損している場合であっても、他の記録等から刑事訴訟法291条2項の冒頭手続(起訴状の朗読等)が適法に履行されたことが認められるならば、訴訟手続に法令違反はない。 第1 事案の概要:被告人が上告を申し立てた事案において、原審の公判調書の一部が破損していた。弁護人はこれを理由に、刑事訴…