原判決の結論に影響を及ぼさない違憲の主張
刑法186条
判旨
常習賭博罪(刑法186条1項)の成立に不可欠な常習性の認定において、起訴されていない賭博行為を資料とすることの是非が争われたが、仮に当該行為を除外しても、本件賭博の回数、種類、態様、規模、賭金額、参加者等の諸事情を総合して常習性が認められるならば、有罪判決は維持される。
問題の所在(論点)
常習賭博罪の要件である「常習性」の認定において、起訴されていない賭博行為を資料とすることは許されるか。また、そのような資料を用いた認定は、判決の結論に影響を及ぼす違法となるか。
規範
刑法186条1項の「常習」とは、賭博行為を反復累行する習癖があることをいい、その認定は、当該賭博行為の回数、種類、態様、規模、賭金額、参加者の属性等の諸事情を総合的に考慮して判断されるべきである。未起訴の事実を認定資料とすることの憲法上の是非については直接示していないが、当該資料を除外してもなお常習性を基礎付ける客観的事実が存する場合には、認定を相当とする。
重要事実
被告人Aは、常習賭博罪の罪名で起訴された。原審は、被告人が常習として賭博を行ったことを認定する際、起訴状に記載されていない(起訴されていない)過去の賭博行為をも認定資料として用いた。これに対し被告人側は、未起訴事実を認定資料とすることは憲法31条、38条3項等に違反し、適正手続に反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被告人側が問題とする未起訴の賭博行為を認定資料から除外したとしても、記録上明らかな本件賭博自体の具体的状況が考慮されるべきである。すなわち、賭博が行われた「回数」、ゲームの「種類」、実施の「態様」、場所や金額の「規模」、投じられた「賭金額」、および「参加者」等の客観的事実が重視される。これらの要素を総合すれば、未起訴事実を考慮せずとも、被告人が反復して賭博を行う習癖、すなわち常習性を有していたことは十分に認められる。したがって、原判決の認定手法に疑問があるとしても、結論において常習性を認めたことは相当である。
結論
被告人が常習として本件賭博を行ったとの原審の認定は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
常習性という主観的・客観的属性を認定するにあたり、公訴事実以外の事実(余罪等)をどの程度考慮できるかという文脈で活用できる。実務上は、本判例が挙げた「回数、種類、態様、規模、賭金額、参加者」という具体的考慮要素を、事案の事実に即してあてはめる際のガイドラインとして用いるべきである。
事件番号: 昭和32(あ)2496 / 裁判年月日: 昭和33年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】常習賭博罪における「常習」の認定は、賭博行為者の習癖、賭博の回数、期間、態様等の諸事情を総合して判断されるべきであり、判示事項にそれらの具体的事実が摘示されている限り、理由不備の違法は認められない。 第1 事案の概要:被告人が常習として賭博を行った事案において、原審が常習賭博罪の成立を認めた。これ…