論旨は原判決適條に「被告人A、同Bの判示所爲は各刑法第一八六條第一項に該るからその所定刑期範圍内で被告人A、B、C、Dを各懲役六月に處し云々」と記載し被告人C、Dに對する適條を遺脱しおれり、右は刑事訴訟法第三六〇條、第四〇七條、第一〇九條に違反し原判決は破毀を免れざるものと思料す、というのであるが、原判決の適條をみると論旨指摘のように記載してあつて被告人C及び同Dに對する適條を遺脱していることは洵に所論のとおりである。然らば原判決は法令の適用を示さざる違法があるから右被告人C及びDの部分は破棄を免れない。
破毀を免れない適條の遺説
舊刑訴法360條1項,舊刑訴法410條19號
判旨
常習賭博罪における「常習」とは、賭博を反復して行う習癖を指し、前科の有無にかかわらず、賭博の種類、態容、賭金額、期間、頻度等の諸般の事情を総合して判断される。
問題の所在(論点)
刑法186条1項の「常習」の意義、および前科がない場合であっても諸般の事情から常習性を認定することが可能か。
規範
常習賭博罪(刑法186条1項)にいう「常習」とは、犯人に反復して賭博をする習癖があることをいい、必ずしも賭博の前科があることを要しない。習癖の有無は、①賭博の種類、②賭金の多寡、③賭博が行われた期間・度数、④前科の有無等、諸般の事情を斟酌して判断すべきである。
重要事実
被告人らは、昭和23年5月から6月にかけて、本件賭博を数回にわたり反復して行っていた。被告人らには特段の賭博前科は示されていないが、原審はその種類、態容、賭金額などの態様および短期間の反復事実を捉えて常習性を肯定した。
あてはめ
被告人らは昭和23年5、6月の頃に本件賭博を数回にわたって反復している。この期間・度数に加え、本件賭博の種類や態容、賭金額の多寡といった諸事情を総合すれば、たとえ前科がなくとも反復して賭博を行う習癖が認められる。したがって、本件行為は習癖の発現として行われたものと評価できるため、常習性が認められる。
結論
被告人らの行為は常習賭博罪(刑法186条1項)に該当する。
実務上の射程
常習性の認定において、前科は必須の要件ではなく、当該犯行そのものの回数や態様から習癖を推認できることを示した。実務上は、犯行の反復性(期間・回数)と内容の質的異常性(賭金額等)を摘示して常習性を論証する際の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和23(れ)34 / 裁判年月日: 昭和23年4月6日 / 結論: 棄却
被告人は昭和四年四月より同一四年一月までの間に賭博罪で六回、同一五年二月より同一九年二月までの間に賭博開帳常習賭博罪又は常習賭博罪で四回處罰されたものであつて、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審においてかかる前科にてらし本件賭博を常習賭博と認定したことは正當であつて、論旨の如き違法は認めら…