被告人は昭和四年四月より同一四年一月までの間に賭博罪で六回、同一五年二月より同一九年二月までの間に賭博開帳常習賭博罪又は常習賭博罪で四回處罰されたものであつて、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審においてかかる前科にてらし本件賭博を常習賭博と認定したことは正當であつて、論旨の如き違法は認められない。所論の如く本件賭博行爲は、被告人の犯した本件賭博罪直前の賭博罪により處罰された日より略三年三ケ月を經過した後に行われたものであることは記録上明らかであるが、三年以上同じ賭博行爲をしなければ賭博の習癖は消滅したものと認めなければならないという實驗則は存在しないから、本件賭博を常習賭博と認定したからとて實驗則に違背して事實を認定したものということはできない。
賭博の常習性の認定と實驗則
刑法186条1項
判旨
刑法186条1項の「常習」とは、賭博行為を反復累計する習癖があることをいい、前科の内容や回数からその習癖が認められる場合には、前回の処罰から相当期間が経過していても常習性を肯定しうる。
問題の所在(論点)
刑法186条1項の常習賭博罪における「常習」性の判断において、多数の前科がある一方で、直近の処罰から約3年3ヶ月という相当期間が経過している場合に、依然として賭博の習癖を認めることができるか。
規範
「常習」とは、賭博行為を反復累計する習癖(犯人の属性としての習癖)をいう。この習癖の有無は、犯行の回数、態様、前科の有無・内容等を総合して判断すべきであり、一定期間の経過のみをもって直ちに習癖が消滅したと解すべき実験則は存在しない。
重要事実
被告人は、昭和4年から昭和14年までの間に賭博罪で6回、昭和15年から昭和19年までの間に賭博開帳常習賭博罪または常習賭博罪で4回処罰された経歴を有していた。本件賭博行為は、直前の賭博罪による処罰から約3年3ヶ月が経過した後に行われたものであった。
あてはめ
被告人には計10回に及ぶ賭博関連の前科があり、その内容は賭博罪のみならず常習賭博罪等も含まれている。このような前科の頻度および内容は、被告人の賭博習癖が相当に根強いものであることを強く推認させる。直近の処罰から約3年3ヶ月が経過しているものの、この程度の期間の経過によって根強い習癖が当然に消滅したとはいえず、実験則上もそのような制約はない。したがって、被告人の属性として依然として賭博の習癖が維持されていると評価できる。
結論
被告人の本件賭博行為は常習によるものと認められ、常習賭博罪が成立する。
実務上の射程
常習性の認定において、前科の存在が極めて強力な推認資料となることを示した。特に、長期間にわたる多数の前科がある場合、数年の空白期間があっても習癖の継続が肯定されやすい。実務上は、前科の性質・回数と犯行の間隔を対比させ、「習癖が根強いか否か」という観点から論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)2797 / 裁判年月日: 昭和25年3月28日 / 結論: 棄却
賭博の常習者というのは賭博を反復累行する習癖ある者を指すのである。ところで、被告人は昭和一五年八月八日荻區裁判所で常習賭博罪によつて懲役一〇月に同一六年一〇月三日同裁判所において同罪で懲役一年二月に處せられたものであつて、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審においてかかる前科にてらし被告人の…