賭博の常習者というのは賭博を反復累行する習癖ある者を指すのである。ところで、被告人は昭和一五年八月八日荻區裁判所で常習賭博罪によつて懲役一〇月に同一六年一〇月三日同裁判所において同罪で懲役一年二月に處せられたものであつて、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審においてかかる前科にてらし被告人の本件賭博を常習賭博と認定したことは正常であつて論旨の如き違法は認められない。所論の如く、本件賭博行爲は、被告人の犯した本件賭博罪直前の常習賭博罪により處罰された日から略六年四ケ月餘を經過した後に行われたものであることは記録上明らかであるが、六年以上賭博行爲により罰せられた事實がなければ賭博の習癖は消滅したものと認めなければならないという實驗則は存在しないから、原審が本件賭博を認定したからとて、實驗則に違背して事實を認定したものということはできない。
賭博常習性の認定と實驗則
刑法186條1項,舊刑訴法337條
判旨
常習賭博罪における「常習」とは、賭博を反復累行する習癖があることを指し、前科から認められる習癖は相当期間の経過のみをもって当然に消滅するものではない。
問題の所在(論点)
刑法186条1項(常習賭博罪)の構成要件である「常習」の意義、および前科から認定される賭博の習癖が、数年の期間経過(本件では約6年4ヶ月)によって消滅したとみなされるか。
規範
刑法186条1項にいう「常習」とは、賭博行為を反復累行する習癖があることを指す。この習癖の有無は、被告人の前科、犯行の態様、動機等の諸事情を総合して判断されるべきであり、過去に形成された習癖が時間の経過のみによって直ちに消滅したとみなされるわけではない。
重要事実
被告人は昭和15年および昭和16年に常習賭博罪でそれぞれ懲役刑に処せられた前科を有していた。本件の賭博行為は、前回の処罰から約6年4ヶ月が経過した後に行われたものであった。被告人側は、長期間の経過により賭博の習癖は消滅していると主張して、常習性の認定を争った。
あてはめ
被告人には過去に二度の常習賭博罪による処罰歴があり、これに照らせば賭博の習癖は相当に根強いものであると推認できる。本件犯行が前刑から約6年4ヶ月後になされたとしても、一定期間の経過によって習癖が消滅したと認めるべき実験則は存在しない。したがって、前科によって示された習癖は依然として保持されていたと評価するのが相当である。
結論
本件賭博行為には常習性が認められ、常習賭博罪が成立する。
実務上の射程
常習性の認定において前科が重要な判断材料となることを示した。特に、数年のブランクがあっても、前科の回数や内容から「習癖」の根強さが肯定される場合には、常習性を維持していると認定される可能性が高い。答案上は、時間的間隔を重視する反対利益を考慮しつつ、前科の質的・量的評価によって習癖の継続性を肯定する文脈で使用する。
事件番号: 昭和23(れ)34 / 裁判年月日: 昭和23年4月6日 / 結論: 棄却
被告人は昭和四年四月より同一四年一月までの間に賭博罪で六回、同一五年二月より同一九年二月までの間に賭博開帳常習賭博罪又は常習賭博罪で四回處罰されたものであつて、賭博の習癖は相當根強いものであることを窺い知ることができる。原審においてかかる前科にてらし本件賭博を常習賭博と認定したことは正當であつて、論旨の如き違法は認めら…