刑法第一八六條第一項に所謂賭博常習者とは、賭博を反覆累行する習癖のあるものをいう立法趣旨であつて、必ずしも賭博を渡世とする博徒の類のみを指すものではない。又かかる習癖のあるものである以上たといそのものが正業を有しているとしてもその一事を以て直ちにこれを賭博常習者でないとはいい得ないのである。
博徒と賭博常習者
刑法186條1項
判旨
刑法186条1項にいう「常習」とは、賭博を反復累行する習癖があることをいい、博徒等の属性は不要である。また、正業を有している一事をもって常習性の認定が妨げられることはない。
問題の所在(論点)
刑法186条1項の「常習として賭博をした者」の意義、および正業を有する者が同条の常習者に該当するか否かが問題となる。
規範
刑法186条1項にいう「常習として賭博をした者」とは、賭博を反復累行する習癖のある者をいう。これは必ずしも博徒であることを要せず、また正業を有している者であっても、賭博の習癖が認められる限り常習者に該当する。常習性の有無は、前科の回数、賭博の態様、動機、所持金や賭金の額等の諸事情を総合して判断すべきである。
重要事実
被告人は、昭和11年から昭和20年までの間に4回、いずれも賭博罪で罰金刑に処せられた前科があった。本件当日、被告人は所持金約1万5000円を携え、1回につき500円から3000円程度の賭金を投じて賭博を行った。さらに、本件の約1か月前にも2回ほど賭博を行い、合計3万円余を失っていた事実が認められた。
あてはめ
まず、被告人には過去9年間に4回の賭博前科があり、短期間に反復して賭博を行っている。次に、本件当日の賭金額や所持金の比率、さらに直近1か月間にも多額の損失を出すまで賭博を繰り返していた事実に照らせば、被告人には賭博を反復累行する習癖が認められる。被告人が博徒を渡世とする者でなく、また正業を有していたとしても、右の習癖を否定する理由にはならない。
結論
被告人は賭博を反復累行する習癖のある「常習として賭博をした者」に該当する。
実務上の射程
常習賭博罪における「常習」の定義を示したリーディングケースである。答案上は、前科の回数、犯行の頻度、賭金の額、生活状況(正業の有無)といった具体的事実を総合し、それが「反復累行する習癖」の現れといえるかを論理的に説明する際の指標となる。博徒のような属性は不要である点に注意を要する。
事件番号: 昭和24(れ)1135 / 裁判年月日: 昭和25年3月10日 / 結論: 破棄自判
論旨は原判決適條に「被告人A、同Bの判示所爲は各刑法第一八六條第一項に該るからその所定刑期範圍内で被告人A、B、C、Dを各懲役六月に處し云々」と記載し被告人C、Dに對する適條を遺脱しおれり、右は刑事訴訟法第三六〇條、第四〇七條、第一〇九條に違反し原判決は破毀を免れざるものと思料す、というのであるが、原判決の適條をみると…