一 被告人の前科調書によると被告人に賭博の前科が四回あるのである。原審は右事実等から被告人の本件賭博を常習賭博と認定したものであつて、その認定は事實審たる原審の判斷に委せられている事項である。 二 博徒でない者でもまた賭博の方法が賭徒の行う方法でないときでも苟くも賭博を行う習癖のあるものについては常習賭博を認定し得る。
一 賭博の前科が四回ある事實と賭博の常習性の認定 二 賭博の方法と賭博の常習性の認定
刑法186條1項
判旨
常習賭博罪における常習性とは、博徒であることや博徒が行うような方法であることを要せず、賭博を繰り返す習癖があると認められる場合に成立する。被告人に賭博の前科が複数あることは、常習性を認定する上で重要な事実となり得る。
問題の所在(論点)
刑法186条1項(常習賭博罪)の構成要件である「常習」の意義、および常習性を認定するために被告人が「博徒」であることや「博徒の方法」を用いることが必要か。
規範
刑法186条1項にいう「常習」とは、賭博を繰り返す習癖をいい、博徒としての地位や、博徒が行うような特殊な賭博方法を用いることを要しない。常習性の有無は、賭博の回数、前科の有無、賭博の態様、動機等を総合して判断されるべき事実認定の問題である。
重要事実
被告人は、過去に賭博の前科が4回あった。本件において被告人は、博徒が用いるような方法ではない手法で賭博を行い、被告人自身も周囲の参加者も博徒(いわゆるプロの賭博師)ではなかった。弁護側は、博徒でない者が博徒の手法を用いずに行った賭博は「常習」には当たらないと主張し、また原審が懲役刑を科す目的で常習性を認定したものであるとして上告した。
あてはめ
被告人には過去に4回もの賭博前科があることから、賭博を反復累行する習癖(常習性)があると認められる。被告人や同伴者が「博徒」という社会的属性を有していないことや、賭博の手法が博徒特有の専門的なものでないことは、常習性の認定を左右するものではない。本件における認定は、刑罰を加重するために作為的になされたものではなく、被告人の属性にかかわらず、その習癖自体を対象としてなされた正当な事実認定であるといえる。
結論
被告人が博徒でなく、博徒の方法によらない賭博であっても、賭博を行う習癖がある以上、常習賭博罪が成立する。
実務上の射程
常習性の認定において、主観的態様(習癖)が重要であることを示した射程の広い判例。答案上は、前科の回数や犯行の頻度といった客観的事実から「習癖」を導き出す際の論拠として使用できる。また、被告人の属性(素人かプロか)が常習性を否定する決定的な要素にならないことを明示する際にも有用である。
事件番号: 昭和24(れ)1380 / 裁判年月日: 昭和24年11月17日 / 結論: 棄却
賭博の常習とは、賭博を反覆累行する習癖を指し、所論のようにその者の生活において賭博が常態化していることを要するものではない。されば原判決が判示賭博の外五回に亘りいずれも同種の賭博を累行した事蹟に徴し常習を認定したことは經驗則に照し肯認し得るところであつて、原判決には所論の違法は存しない。