賭博の常習とは、賭博を反覆累行する習癖を指し、所論のようにその者の生活において賭博が常態化していることを要するものではない。されば原判決が判示賭博の外五回に亘りいずれも同種の賭博を累行した事蹟に徴し常習を認定したことは經驗則に照し肯認し得るところであつて、原判決には所論の違法は存しない。
五回に亘る同種賭博の累行と常習性の認定
刑法186條1項,舊刑訴法336條,舊刑訴法360條1項
判旨
常習賭博罪における「常習」とは、賭博を反復累行する習癖を指し、生活において賭博が常態化していることまでは要しない。
問題の所在(論点)
刑法186条1項の常習賭博罪における「常習」の意義、および生活上の常態化が必要か否か。
規範
刑法186条1項にいう「常習」とは、賭博を反復累行する習癖があることを指す。これについては、行為者の性格、素行、前科の有無、賭博の回数・態様等を総合して判断すべきであり、その者の生活において賭博が常態化(生活の一部として定着)していることまでを必要とするものではない。
重要事実
被告人は、判示された賭博行為以外にも、過去に5回にわたって同種の賭博を累行していた事実がある。原審はこの事蹟に基づき、被告人に賭博の習癖があるとして常習性を認定した。これに対し弁護人は、生活において賭博が常態化している必要があると主張して上告した。
あてはめ
常習性の有無は、賭博行為の反復性やその背景にある習癖の有無によって決せられる。本件において、被告人は既に5回もの同種賭博を累行している。このような事蹟は、被告人が賭博を反復累行する習癖を有していることを示すのに十分である。弁護人が主張する「生活において賭博が常態化していること」は、常習性を構成する必須の要件ではなく、上記のような累行の事実から習癖を認めた原判決の判断は経験則に照らして正当である。
結論
被告人の行為は常習賭博罪に該当する。常習性の認定に生活の常態化は不要であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
常習犯(常習賭博、常習累犯窃盗等)の「常習性」の定義として、司法試験でもそのまま引用可能な標準的規範である。生活実態という主観的・環境的要素よりも、「反復累行する習癖」という行動傾向を重視する点に特徴がある。
事件番号: 昭和24(れ)1576 / 裁判年月日: 昭和24年10月8日 / 結論: 棄却
一 被告人の前科調書によると被告人に賭博の前科が四回あるのである。原審は右事実等から被告人の本件賭博を常習賭博と認定したものであつて、その認定は事實審たる原審の判斷に委せられている事項である。 二 博徒でない者でもまた賭博の方法が賭徒の行う方法でないときでも苟くも賭博を行う習癖のあるものについては常習賭博を認定し得る。