一 賭博の常習者というのは、賭博を反覆累行する習癖ある者を指すのである。さればかかる習癖の認められる者である以上、假りに所論のように、被告人が小間物商を營み多額の營業税及び所得税に納め、その生業に多忙の日を送つていて、本件犯行の動機が共犯者の誘惡によるものであるとしても、被告人を常習賭博者と認定するに毫も妨げるところがない。 二 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」というのは不必要な精神的肉體的苦痛を内容とする人道上殘酷と認められる刑罰を意味し單なる量刑の不當をいうものでないことは、當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三二三號同二三年六月二三日大法廷判決)の示すとおりである。
一 生業を勵む者に對する賭博の常習性の認定 二 憲法第三六條にいわゆる「殘虐な刑罰」の意議と量刑不當の主張
刑法186條,憲法36條
判旨
刑法186条1項の「常習」とは、賭博を反復累行する習癖があることを指し、生業に従事している者であっても、前科等の事実からその習癖が認められる限り常習犯として成立する。
問題の所在(論点)
刑法186条1項(常習賭博罪)における「常習」の意義、および正当な生業を有し誘惑により犯行に及んだ場合に常習性が否定されるか。
規範
刑法上の「常習」者とは、当該犯罪行為を反復累行する習癖のある者を指す。この習癖の有無は、被告人の前科、犯行の回数・態様等の諸般の事情を総合して判断されるべきであり、被告人が正当な生業を有し、あるいは犯行の動機が他者の誘惑によるものであったとしても、習癖が認められる限り常習性の認定は妨げられない。
重要事実
被告人は小間物商を営み、多額の営業税および所得税を納めるなど正当な生業に多忙であった。本件賭博行為の動機は共犯者の誘惑によるものであったが、被告人には過去に賭博の前科が存在していた。原審はこれらの前科等の事実に基づき、被告人を常習賭博者と認定した。
あてはめ
常習性の判断において重要なのは賭博を繰り返す習癖の有無である。被告人が小間物商として真面目に働き納税しているという社会的事情や、犯行が誘惑によるものであるという動機的事実があったとしても、それらは習癖の存在を直ちに否定するものではない。本件においては、原判決が摘示した前科の事実から、被告人に賭博を反復累行する習癖があると認定することは経験則に反せず、合理的である。
結論
被告人は「常習」者にあたり、常習賭博罪が成立する。
実務上の射程
常習性の定義を「習癖」と簡潔に示した基本判例である。答案上は、本人の生活状況(生業の有無)や動機といった個別事情よりも、前科や累行事実を重視して習癖を認定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)1380 / 裁判年月日: 昭和24年11月17日 / 結論: 棄却
賭博の常習とは、賭博を反覆累行する習癖を指し、所論のようにその者の生活において賭博が常態化していることを要するものではない。されば原判決が判示賭博の外五回に亘りいずれも同種の賭博を累行した事蹟に徴し常習を認定したことは經驗則に照し肯認し得るところであつて、原判決には所論の違法は存しない。