一 刑法第一八六条の常習賭博罪が同第一八五条の単純賭博罪に比し、賭博常習者という身分によつて刑を加重していることは所論のとおりである。そして右加重の理由は賭博を反覆する習癖にあるのであつて、即ち常習者賭博は単純賭博に比しその反社会性が顕著で、犯情が重いとされるからである。そして、賭博常習者というのは、賭博を反覆する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法第一四条にいわゆる社会的身分と解することはできない。されば刑法第一八六条の規定をもつて憲法第一四条に違反するものであるとの趣旨は到底これを採用することはできない。 二 賭博の前科のみによつて賭博の常習性を認定することは必らずしも違法ではなく、また所論の右最終前科と本件賭博との間にたとい四年の歳月を経過していればとて、右前科を賭博常習認定の一資料とすることに何等経験則上の違背も認めることはできない。
一 賭博常習者と憲法第一四条にいわゆる社会的身分 二 四年前の賭博の前科を常習性認定の一資料とすることの可否
憲法14条,刑法186条,刑法185条
判旨
常習賭博罪における「常習性」は、賭博を反復する習癖という犯罪者の属性を指し、前科の事実や今回の犯行態様を総合して認定すべきである。また、常習犯という身分による刑の加重は憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
刑法186条が「常習」という身分によって刑を加重することが憲法14条(法の下の平等)に違反しないか。また、数年前の賭博前科のみ、あるいは前科と本件行為を合わせて常習性を認定することが許されるか。
規範
常習賭博罪(刑法186条1項)が単純賭博罪に比して重く処罰されるのは、賭博を反復する習癖があることに基づく。この「常習性」は、犯罪者の属性としての身分である。その認定に際しては、過去の賭博前科の内容や回数、および今回の賭博行為の内容(態様、手段等)を総合的に考慮して判断する。なお、数年の期間が経過した前科であっても、常習性認定の資料とすることは経験則上妨げられない。
重要事実
被告人は昭和15年から19年にかけて4回の賭博前科(うち2回は常習賭博)を有していた。今回の事件では、骨牌などを使用して「賽本引」と称する博奕を敢行した。最終の前科から本件犯行までに約4年の歳月が経過していたが、原審はこれらの事実を総合し、被告人の常習性を肯定した。
あてはめ
まず、常習性は犯罪を繰り返す習癖という個人の属性であり、反社会性が顕著で犯情が重いことから加重されるものである。これは憲法14条の「社会的身分」には当たらない。次に、本件では単に前科のみで判断したのではなく、4回の賭博前科(反復の事実)に加えて、本件の博奕の具体的な事跡を併せて検討している。4年という期間の経過も、習癖の存否を判断する資料としての価値を失わせるものではなく、これらを総合して常習性を認めた判断に経験則上の違背はないといえる。
結論
刑法186条は憲法14条に違反せず、本件の事実関係から被告人の常習性を認めた原判決は正当である。上告棄却。
実務上の射程
常習犯の認定手法に関するリーディングケース。答案では「常習性」の意義(習癖)を明示した上で、あてはめにおいて「回数」「種類」「期間」「犯行態様の類似性」などの具体的事実を総合考慮する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和23(れ)1325 / 裁判年月日: 昭和24年2月24日 / 結論: 棄却
刑法第一八六條第一項に所謂賭博常習者とは、賭博を反覆累行する習癖のあるものをいう立法趣旨であつて、必ずしも賭博を渡世とする博徒の類のみを指すものではない。又かかる習癖のあるものである以上たといそのものが正業を有しているとしてもその一事を以て直ちにこれを賭博常習者でないとはいい得ないのである。