原審公判調書における所論挿入の額の欄外には「一行挿入」と記載あり、右挿入の部分には裁判所書記の印が押してある。其故欄外に挿入の字數を記さず「一行挿入」と記したことだけが舊刑事訴訟法第七二條所定の方式に合して居なくても、その挿入削除が筆跡其他から權限ある裁判所書記によつてなされたものと認められるときはこれを無効とすべきものでないこと當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)、第一一三號、同年五月一日言渡判決)(昭和二三年(れ)同一三八七號、同二四年二月一〇日言渡判決)
挿入の部分に書記の捺印があり額の欄外の「一行挿入」の下に捺印を缺く公判調書の効力
舊刑訴法72條
判旨
公判調書の更正(挿入・削除)において、法令所定の方式と異なる記載がなされた場合であっても、権限ある裁判所書記官によってなされたことが認められるときは、当該更正は有効である。また、衆議院議員選挙法115条(当時)の罪の成立に、犯人が選挙権を有していることは要件とならない。
問題の所在(論点)
1. 公判調書の更正手続に方式違背がある場合、その更正および関連する証拠調べの効力はどうなるか。 2. 衆議院議員選挙法115条の罪の成立に、犯人が選挙権を有していることは必要か。
規範
公判調書の挿入・削除の方式が法令(旧刑事訴訟法72条等)の定める方式に厳密に合致していなくても、その筆跡、墨色、その他の状況から、権限を有する裁判所書記官によってなされたものと認められるときは、当該挿入・削除を無効とすべきではない。また、選挙運動に関する収賄等の罪において、主体が選挙権を有することは構成要件に含まれない。
重要事実
被告人が選挙運動に関して報酬を受け取った等として起訴された事案において、原審の公判調書の欄外に「一行挿入」との記載があり裁判所書記の印は押されていたが、法令が定める「挿入の字数」の記載が欠けていた。また、被告人は自身に選挙権がないことを理由に、衆議院議員選挙法115条の罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
1. 本件の公判調書における挿入部分は、欄外に字数ではなく「一行挿入」と記載されている点では方式に反する。しかし、当該挿入は調書作成と同一の書記官によってなされたことが筆跡や墨色から十分に認められる。したがって、この挿入は有効であり、当該回答書に関する証拠調べ手続も適法になされたといえる。 2. 衆議院議員選挙法115条の規定をみるに、犯人が選挙権を有することを要件とする旨の文言はない。よって、被告人に選挙権がなかったとしても、同罪の成立を妨げるものではない。
結論
1. 公判調書の更正は有効であり、証拠調べ手続に違法はない。 2. 被告人に選挙権がなくても、衆議院議員選挙法違反の罪は成立する。
実務上の射程
公判調書の形式的瑕疵が直ちに調書の無効を招くわけではないという実務上の判断基準を示す。司法試験においては、刑事訴訟法上の「調書の正確性」が争点となる場面で、実質的に権限者による作成と認められるかという観点から、瑕疵の治癒や有効性を論じる際の参考となる。また、選挙犯罪のような身分犯的側面が議論される際の構成要件解釈の先例となる。
事件番号: 昭和25(あ)2461 / 裁判年月日: 昭和26年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定における経験則違反や採証の誤りの主張は、単なる訴訟法違反の主張にすぎず、刑訴法405条所定の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人Bら5名が、被告人Aに対し、特定の目的をもって一定額の金員を供与したという共謀及び事実につき、第一審判決が認定した。弁護人は、この認定が経験則に反す…
事件番号: 昭和22(れ)143 / 裁判年月日: 昭和22年12月15日 / 結論: 破棄差戻
司法警察官の聽取書の供述者を證人として訊問することを辯護人が申請しているにかかわらず、これを却下し、供述者を公判期日において訊問する機曾を被告人に興えないで、前記聴取書を證據として採つたことは、刑訴應急措置法第一二條に反するものである。
事件番号: 昭和41(行ツ)59 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
一 不在者投票手続における投票の立会人は、当該市町村の選挙人名簿に登録された者一名のみで足りる。 二 不在者投票管理者が不在者投票を直ちにその選挙人の属する投票区の投票管理者に送致しなかつたとしても、それが投票所閉鎖時刻までに送致されている以上、選挙の効力に影響しない。 三 選挙人名簿に多数の無資格者が誤載されていたと…