司法警察官の聽取書の供述者を證人として訊問することを辯護人が申請しているにかかわらず、これを却下し、供述者を公判期日において訊問する機曾を被告人に興えないで、前記聴取書を證據として採つたことは、刑訴應急措置法第一二條に反するものである。
公判期日に於ける證人訊問申請と刑訴應急措置法第一二條
刑訴應急措置法12條
判旨
被告人に供述者を公判期日において訊問する機会を与えることなく、当該供述者の供述を録取した書面を証拠として採用することは、刑訴応急措置法12条(現行刑訴法321条1項等の趣旨)に違反する。また、事実認定の部と追徴額の計算の基礎となる事実が齟齬する判決は、法令違反として破棄を免れない。
問題の所在(論点)
1. 被告人に反対訊問の機会を与えないまま、共謀者の供述録取書を証拠として採用することが許されるか(刑訴応急措置法12条違反の有無)。2. 判決の事実認定と追徴額の算定に齟齬がある場合、判決にどのような影響を及ぼすか。
規範
被告人に対し、供述者を公判期日にて訊問する機会を十分に与えないまま、その供述を録取した書類を証拠として採用することは、伝聞証拠の制限及び反対訊問権の保障の観点から許されない。また、判決における事実認定は前後で矛盾がなく、認定された事実に基づき適正な処断(没収・追徴等)がなされなければならない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反(投票依頼目的の金品供与)で起訴された事案において、原審は共謀者Aの司法警察官に対する聴取書を証拠として犯罪事実を認定した。被告人側はAとの共謀を否認し、Aの証人尋問を申請したが、原審は特段の困難な事情がないにもかかわらずこれを却下した。さらに、原審は事実認定において5名に計500円を供与したとしながら、追徴の段では計520円の追徴を命じており、認定事実と計算に齟齬があった。
事件番号: 昭和24(れ)1909 / 裁判年月日: 昭和25年4月26日 / 結論: 棄却
一 被告人および第一審相被告人A(選舉事務長)、B、C)いづれも選舉運動者)が戸別訪問をしたのは、被告人が立候補するにつき推薦人になつてもらうためであつて、投票を得る目的でなかつたことは、原判決引用の聽取書の残りの部分に記載されているにもかゝわらず、原判決が投票を得る目的で戸別訪問をしたとも取れる部分のみを引用して有罪…
あてはめ
1. 弁護人がAの証人尋問を申請しているにもかかわらず、原審はこれを却下し、被告人に訊問の機会を与えないままAの聴取書を証拠として採用した。これは被告人の防御権を侵害し、伝聞法則の例外要件を欠く証拠採用であり違法である。2. 事実認定では500円の供与(靴クリームの供与事実は別人と認定)としながら、追徴では520円を命じており、判決の内容が前後で矛盾している。これらの違法は単一刑で処断された判決全体に影響を及ぼす。
結論
原判決には、証拠採用の手続的違法および事実認定の不合理(齟齬)があり、これらは判決に影響を及ぼすことが明らかであるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
現行刑訴法321条以下における伝聞例外の適用において、反対訊問権の保障が不可欠であることを示す初期の重要判例である。特に、証人尋問申請を不当に却下して書面を採用することの違法性を主張する際の根拠となる。また、没収・追徴の対象となる価額が認定事実と整合しないことが、判決全体の破棄事由になり得る点も実務上留意すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)1111 / 裁判年月日: 昭和24年3月26日 / 結論: 棄却
所論第二審におけるAに對する證人訊問は同人は舊刑訴法第二〇一條第一項第五號に該當する者であるのに、之に宣誓せしめて訊問したのは同條違反であり、延いて憲法第三八條第一項に違反するものであるとしても、第二審判決は同證人の證言は之を證據に採つてはいないのであるから、假令右條違反があるとしても舊刑訴法第四一一條の規定に依り判決…
事件番号: 昭和23(れ)1663 / 裁判年月日: 昭和25年6月28日 / 結論: 棄却
一 衆議院議員選舉法第一一四條は、當選を得る目的をもつて、選舉人又は選舉運動者に對し金錢その他の財産上の利益が供與せられた場合について「收受シ……タル利益ハ之ヲ没收ス」と規定しているのであつて、同條は「利益收受者」に對する刑として没收刑を規定しているのである。しかるに、原判決が没收を言渡した押收の金八〇〇圓は被告人が判…
事件番号: 昭和24(れ)307 / 裁判年月日: 昭和26年5月2日 / 結論: 棄却
議員選挙に際してその候補者となろうとする者が、いわゆる追放令による覚書非該当者の確認を求めるため、確認の申請をする以前に、立候補の決意を固め自己の当選を得る目的で他人に対し選挙運動を依頼し且つ投票取まとめのための資金を供与した場合には、事前運動及び金銭供与の選挙犯罪が成立することは明らかである。それは、後になつて審理の…