一 被告人および第一審相被告人A(選舉事務長)、B、C)いづれも選舉運動者)が戸別訪問をしたのは、被告人が立候補するにつき推薦人になつてもらうためであつて、投票を得る目的でなかつたことは、原判決引用の聽取書の残りの部分に記載されているにもかゝわらず、原判決が投票を得る目的で戸別訪問をしたとも取れる部分のみを引用して有罪判決の證據としたのは採證法則に違反する、というのである。よつて記録を調べて見ると、被告人等は、既に第一審公判においても推薦人になつてもらうための訪問であることをほのめかし、殊に原審公判においてはその旨を強調しており、また第一審および原審の證人はいずれも、推薦人になつてくれとの趣旨の訪問であつた旨を供述しているのである。しかし地方檢事の聽取書司法警察官の聽取書等によれば、被告人および第一審相被告人等が被告人の名刺數枚を各戸別に置いて來たことを認め得るのであつて、かような事は單に推薦人になつてもらう目的のみしかなかつたものとは認められ得ない。かりに推薦依頼のためだけであると考えると、それを無罪であるとする論旨引用の大審院判例もあるが、それは推薦状に名をつらねてもらうだけの目的で訪問した事案にかゝり、當時の大審院判例も、推薦依頼のための訪問が投票を得または得させる目的を含むものと認められる場合には戸別訪問として處罰しているのであつて(昭和二年(れ)第一四八九號同三年一月二四日第一刑事部判決)、本件は正にその事例に相當する。 二 衆議院議員選舉法第一三七條を準用して地方公共團体の議員の選舉權被選舉權について特定の欠格事由を定めている地方自治法第七三條は、憲法第一五條第三項及び第九三條第二項に違反しない。
一 推薦依頼のための訪問と戸別訪問罪 二 地方自治法第七三條と憲法第一五條第三項同第九三條第二項
衆議院議員選舉法98條,衆議院議員選舉法137條,舊刑訴法336條,憲法15條3項,憲法44條,憲法93條2項,地方自治法73條
判旨
憲法15条3項および93条2項は、地方公共団体の選挙権・被選挙権を法律で制限することを禁止するものではない。推薦依頼目的の戸別訪問であっても、投票を得させる目的を含む場合は、公職選挙法(当時:衆議院議員選挙法)の禁止する戸別訪問に該当する。
問題の所在(論点)
1. 地方公共団体の議員選挙における選挙権・被選挙権の資格を法律で制限することは、憲法15条3項、93条2項に違反するか。 2. 推薦依頼を目的とした訪問が、禁止される「戸別訪問」に該当するか。
規範
憲法15条3項および93条2項は、住民による直接・普通選挙を保障する趣旨であり、合理的な理由により特定の欠格事由を法律で定めることを許さない趣旨ではない。また、選挙運動の禁止態様である「戸別訪問」の成否については、名目上の目的(推薦依頼等)にかかわらず、実質的に投票を得または得させる目的を含むか否かによって判断すべきである。
事件番号: 昭和24(れ)2591 / 裁判年月日: 昭和25年9月27日 / 結論: 棄却
選舉運動としての戸別訪問には種種の弊害を伴うので、衆議院議員選舉法第九八條地方自治法第七二條及び教育委員會法第二八條等は、これを禁止している。その結果として言論の自由が幾分制限せられることもあり得よう。しかし、憲法第二一條は絶對無制限の言論の自由を保障しているのではなく、公共の福祉のためその時、所方法等につき合理的制限…
重要事実
被告人らは、地方公共団体の議員選挙に際し、立候補の推薦人になってもらうことを名目として各戸を訪問した。その際、被告人らは自らの名刺数枚を各戸に置いて帰った。被告人らは、この訪問は推薦依頼が目的であり、投票を得る目的ではなかったため「戸別訪問」の禁止規定に違反しないと主張して争った。
あてはめ
1. 憲法44条が国会議員の選挙資格を法律に委ねているのと同様、地方議会議員の選挙資格も法律で定め得るのは当然である。選挙犯罪者に選挙権行使を認めないことには合理的な理由があるため、法律による制限は合憲である。 2. 被告人らは推薦依頼を主張するが、各戸に名刺を置いて回ったという事実は、単なる推薦依頼の範囲を超えている。このような客観的事実に照らせば、当該訪問には投票を得させる目的が含まれていたと推認できるため、戸別訪問に該当すると解するのが相当である。
結論
1. 法律による選挙権の制限は合憲である。 2. 推薦依頼の名目であっても、投票を得る目的が併存する以上、戸別訪問として処罰される。
実務上の射程
地方選挙における選挙権制限の合憲性を基礎づける判例であるとともに、選挙運動の禁止規定(戸別訪問等)の解釈において、行為者の主観的意図を客観的な態様から実質的に判断する実務上の枠組みを示している。
事件番号: 昭和22(れ)143 / 裁判年月日: 昭和22年12月15日 / 結論: 破棄差戻
司法警察官の聽取書の供述者を證人として訊問することを辯護人が申請しているにかかわらず、これを却下し、供述者を公判期日において訊問する機曾を被告人に興えないで、前記聴取書を證據として採つたことは、刑訴應急措置法第一二條に反するものである。
事件番号: 昭和24(れ)307 / 裁判年月日: 昭和26年5月2日 / 結論: 棄却
議員選挙に際してその候補者となろうとする者が、いわゆる追放令による覚書非該当者の確認を求めるため、確認の申請をする以前に、立候補の決意を固め自己の当選を得る目的で他人に対し選挙運動を依頼し且つ投票取まとめのための資金を供与した場合には、事前運動及び金銭供与の選挙犯罪が成立することは明らかである。それは、後になつて審理の…