しかし、二罪を一罪といて取扱つたという原判決の認定に對する非難は結局被告人の不利益に歸すべきもので、上告の理由にならない。
被告人に不利益な上告理由
舊刑訴法409條
判旨
本来二罪となるべき事実を一罪として取り扱った判決の誤りは、被告人の不利益になるものではないため、上告理由には当たらない。また、証拠と認定事実の細部(内訳)に僅かな相違があっても、犯罪の成立や量刑に影響しない範囲であれば、証拠によらずに事実を認定した違法とはいえない。
問題の所在(論点)
1.本来、二個の贓物寄蔵罪が成立し得る事案を一罪として処断した原判決の誤りは、被告人の利益を害するものとして上告理由となるか。2.証拠と認定事実の間に、犯罪の成否や量刑に影響しない程度の軽微な内訳の齟齬がある場合、証拠によらない事実認定の違法があるといえるか。
規範
1.本来別罪を構成すべき複数の行為を一罪として包括的に処断する判断の誤りは、被告人にとって不利益なものではないため、被告人側からの上告理由とはならない。2.証拠による事実認定において、認定された数値の内訳等に些細な食い違いがあるに過ぎず、それが犯罪の成否や量刑の判断に影響を及ぼさない場合には、証拠に基づかない事実認定(虚無の証拠による認定)の違法は認められない。
重要事実
被告人は、贓物(盗品)であることを知りながら、白羽二重生地65反および人絹188反を預かり、その一部を捜査員に提出し、残りを自宅に隠匿して贓物寄蔵の罪に問われた。原判決はこれに対し刑法256条を1回適用して処断した。また、原判決が認定した「巡査に提出した品数」の内訳(羽二重5反、人絹13反)が、被害届等の証拠上の数値(羽二重2反、人絹15反)と僅かに異なっていたため、被告人側が法の適用誤りおよび証拠によらない事実認定を理由に上告した。
あてはめ
1.仮に原判決が二罪を構成する事実を一罪として処断したとしても、それは被告人にとって刑が軽くなる方向の誤りであり、被告人の不利益に帰すべきものではない。したがって、適法な上告理由とはいえない。2.事実認定の齟齬については、全体の品目個数や巡査に渡した総数は証拠と符合しており、単にその内訳に僅かな差異があるに過ぎない。このような軽微な食い違いは、贓物寄蔵罪の成立にも量刑の算定にも何ら影響を及ぼさないものである。したがって、適正な証拠に基づいた認定の範囲内であり、違法な事実認定とは解されない。
結論
本件上告は理由がないため、棄却される。二罪を一罪とした判断は被告人の不利益とならず、また、量刑に影響しない細部の事実の誤認は判決に影響を及ぼすべき違法とはならない。
実務上の射程
司法試験等の刑事訴訟法において、上告理由となる「判決に影響を及ぼすべき著しい事実の誤認」や「法令適用の誤り」の限界を示す事案である。被告人に有利な方向の誤りは上告理由にならない点、および可罰性に影響しない些末な事実(枝葉末節)の認定の誤りは、適法な事実認定の枠内に収まる点を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和25(れ)1299 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
「被告人は、ほか三名と甲村所在乙会社倉庫より国有綿を窃取せんことを共謀の上、昭和二二年八月二六日ほか三名が乙会社倉庫において国有綿糸八俵及び中古リヤカー一台を窃取した」との公訴事実と「被告人は、ほか三名が昭和二二年八月二六日頃乙会社倉庫から窃取してきた国有綿糸八俵のうち六俵をその盗品たる情を知りながら同年九月初旬頃甲村…