一 賍物寄蔵の公訴事実につき賍物性の未必的認識を認めた原判断に事実誤認があるとして破棄自判(無罪)された事例 二 控訴審における予備的訴因追加の適否につき意見が付された事例
刑法256条,刑訴法411条3号,刑訴法413条但,刑訴法312条,刑訴法400条,刑訴法404条
判旨
賍物罪における盗品等の認識(未必的故意)の認定において、被告人の供述変転や隠した事実のみでは足りず、物品の対価や性質、提供者との関係等の客観的状況から、賍物であることを疑わせる特段の事情の証明が必要である。
問題の所在(論点)
被告人が物品を預かる際、それが「盗品その他罪を犯すことによって領得された物」であることの認識(刑法256条2項)があったといえるか。特に、被告人の不自然な供述態度等の間接事実のみで故意を認定できるかが問題となる。
規範
賍物罪の故意(盗品等の認識)は、未必的なもので足りる。しかし、被告人の態度に「やましさ」や不自然な供述が認められるとしても、直ちに故意を断定することはできない。認定には、①物品の性質・対価の妥当性、②提供者の素行・属性に関する被告人の認識、③収受の経緯や動機、④被告人の前歴や職業上の経験等の諸点に照らし、賍物性の認識を強く推認させる特段の事情が必要である。
重要事実
被告人は、長男の友人Bから、Bの母親の家出費用との名目で、指輪等の物品を担保に2万円を貸し付けた(賍物寄蔵)。被告人は当初、物品の入手先を秘匿し供述を二転三転させたが、後にBから預かったことを認めた。原審は、物品の時価(約6.4万円)に対し貸金が少額であることや、被告人の不自然な秘匿態度等を総合し、盗品である可能性の認識(未必的故意)を認めて有罪とした。
あてはめ
まず、時価約6.4万円に対し2万円の貸付は、対価として著しく低額とはいえず、直ちに故意を推認させない。次に、被告人が当初事実を隠したのは自衛官という立場や長男への懸念による可能性もあり、「やましさ」の徴憑にはなっても、それだけで故意を断定するには足りない。さらに、Bが非行少年であるとの認識や、被告人が過去に類似の取引を反復していた事実も証明されておらず、故意を基礎付ける特段の事情は認められない。
結論
被告人に盗品であることの未必的認識があったと認定するに足りる十分な証拠はなく、有罪とした原判決には重大な事実誤認がある。被告人は無罪。
実務上の射程
故意(未必的故意)の認定における事実認定の枠組みとして重要である。被告人の不合理な弁解や隠蔽工作のみから「やましさ」を捉えて故意を推認する安易な認定を戒めており、客観的な取引条件や属性等の外形的状況を重視する答案構成が求められる。
事件番号: 昭和26(あ)924 / 裁判年月日: 昭和27年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賍物罪の成立に必要な故意として、行為者が目的物を買い入れる際、それが賍物(盗品等)であることの認識を有していれば足りる。 第1 事案の概要:被告人は、本件物件を買い入れた。第一審判決は、証拠に基づき、被告人が当該物件の買入当時、それが賍物であるとの認識があったと認定した。これに対し、被告人側は採証…
事件番号: 昭和49(あ)1161 / 裁判年月日: 昭和50年6月12日 / 結論: 棄却
賍物であることを知らずに物品の保管を開始した後、賍物であることを知るに至つたのに、なおも本犯のためにその保管を継続するときは、賍物の寄蔵にあたる。