理由不備乃至採証法則違反として破棄差戻された後の第二審が証拠を追加して同一事実を認定した場合には、必ずしも上級審の裁判所の裁判における判断と相反する判断をしたことにはならない。
裁判所法第四条に違反しない一事例
裁判所法4条
判旨
盗品等関与罪の成立に必要な犯意としては、目的物が盗品等であることの確定的な認識は不要であり、それが盗品等であるかもしれないと予見しつつ、その取得等に関与する「未必の故意」があれば足りる。
問題の所在(論点)
刑法256条(盗品等関与罪)が成立するために、客体が盗品等であることについてどの程度の認識(故意)が必要か。また、判決においてどのような事実を認定すれば犯意を肯定できるか。
規範
刑法256条の盗品等関与罪における「故意」とは、対象物が財産罪により領得されたものであることについての認識をいう。この認識は、確定的なものである必要はなく、盗品等である可能性を予見し、かつそれを認容している状態(未必の故意)があれば足りる。判旨は、証拠に基づき「賍物であることを知り得る程度」の事実があれば、犯意の成立を肯定する判断枠組みを示した。
重要事実
被告人が盗品等(賍物)の牙を取得した事案において、第一審・第二審が有罪を宣告した。差戻前の第二審判決は、証拠から被告人が目的物を盗品等であることを認識していたかについて十分な判示をしていなかったとして一度破棄されたが、差戻後の原判決は、新たな証拠を追加した上で、被告人が目的物を盗品等であると知り得る状況にあったことを認定し、有罪判決を維持した。これに対し、被告人側が理由不備等を理由に上告したものである。
あてはめ
原判決は、差戻前の判決とは異なり、追加された証拠と判示事実を総合し、被告人が本件の目的物を「賍物であることを知り得る程度」の状態にあったことを具体的に判示した。これは、単なる過失を意味するのではなく、当時の状況から盗品等である可能性を具体的に予見可能であったことを示すことで、未必の故意を証拠上裏付けたものと評価できる。したがって、未必の故意を肯定するに足りる事実の適示がある以上、理由不備の違法はない。
結論
盗品等関与罪の故意は未必的認識で足り、判決において客体が盗品等であることを知り得た程度の状況が具体的に適示されていれば、故意の認定として適法である。
実務上の射程
司法試験の答案作成においては、本判例を根拠に「盗品等関与罪の故意は未必の故意で足りる」と論証する。あてはめでは、被告人が取引時に感じたであろう不自然な点(価格の安さ、相手方の素性、取引の場所・時間等)を拾い上げ、「これらによれば、被告人は目的物が盗品等である可能性を認識していたといえ、未必の故意が認められる」という論理構成で活用する。
事件番号: 昭和26(あ)4414 / 裁判年月日: 昭和28年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賍物罪(盗品等関与罪)の成立には、客体が盗品等であることの認識が必要であるが、第一審判決が挙示した証拠を総合して認定できる場合には、事実誤認の違法はない。 第1 事案の概要:被告人が賍物故買(盗品を有償で譲り受けること)の罪に問われた事案。弁護人は、第一審判決の事実認定に不備があり、判例に違反する…